■10年間で18倍以上…男性DV被害者は何故増える?


同資料によると女性の被害者は2011年の33183人から2021年では 62147人に増えている。同時に目を引くのが「男性被害者」の相談件数だ。こちらも増加していて、2011年1146人から2021年20895人、この10年で約18倍(18.4)になっている。


男性のDV被害者が増えているといっても、女性の被害者の3分の1ほどだ。しかし「DVの加害者は男」というイメージが強かった自分には意外な数字だった。DVの男性被害者が増えている背景には一体何があるというのだろうか。

DV・ストーカー被害の支援を行うNPO法人「STEP」で、2012年から1200人以上のDV被害者・加害者を支援した栗原理事長に話を聞いた。

横浜市の女性・人権支援センターNPO「ステップ」

ーー男性のDV被害はちょっと意外な気がしたんですが、本当に最近増えているのでしょうか?

NPO 女性・人権支援センター STEP 栗原 加代美理事長:
男性の被害者が増えているというのは支援する側からも感じています。男性に対しては身体的に殴るというよりも言葉など、精神的に追い詰められるケースが多いです。

ーー具体的には?

STEP 栗原理事長:
例えば「あんたってATMだよね」「男らしくない」と言ったり、最近だと家事分担などの考え方が変わり「父親なのになんで家事をしないの?」や「稼ぎが少ないくせに、家事全くしないよね」など今まではなかったものもあります。また連日、性交渉を求められ、夜寝るときは裸で寝るように強いられる。それで睡眠不足になって仕事に支障をきたすという旦那さんもいました。

ーーなぜ、そういう状態になってしまうのでしょうか?

STEP 栗原理事長:
まず女性の社会進出が進み、経済的にも夫よりも強い女性が増えてきています。

また、経済的に貧しい家庭が増え、共働きでなければやっていけない家庭では、お財布事情が喧嘩の原因になり易いです。

加えて、メディアなどで「精神的なDV」も知られるようになり、直接手は出されないけれど罵倒されたり、お小遣いを減らされたりする男性が「あれ、俺がされているのもDVなのかも?」と相談するようになり、男性DV被害者が増えていることもあると思います。

NPO 女性・人権支援センター STEP 栗原 加代美理事長。STEPはコロナ禍でリモートカウンセリングを始めたところ、相談にくる夫婦は4倍に増えた。


ーー女性が社会進出して家庭の中で存在感が増すのはいいことのように感じているのですが、それがDVにつながるケースもあるということですか?

少しイジメやパワハラなどと似ていて、経済力だけに限らず決断力とか、口論の強さとか、社会的評価が高いとか、学歴・学力が高いなど・・・そこから力関係ができてしまいます。2人の中で強い・弱いの力関係ができた時に相手を自分の思い通りに「支配」しようとするのがDVの第一歩です。