「女性が本部長するなんて人材不足なんですか?」管理職に就くと他社から厳しい言葉を浴びる
―――卒業して当時の社名の『ジャスコ』に就職されたのはどうしてですか?
当時はまだ理系の女性はなかなか簡単に就職できなくて。大学の先生が「ジャスコなら可能性があるぞ」と。だから私はジャスコ以外は受けていないんです。1年目は兵庫県の加西店でバス・トイレ・洗面などを担当しました。入社して3か月くらいの時にお客さまから「自宅を新築したので、トイレなどのコーディネートをお願いしたい」と言われまして。それから1か月したくらいにお客さまが来られて、「苦情かな…」と思いましたら、「コーディネートがすごく良かったからお礼を言いたい」と。商品を売ってお礼を言っていただける仕事なんて、そんないい仕事ないなって。
―――土谷さんがジャスコに入られたのは1986年ですね?
ちょうど“男女雇用機会均等法”の初年度です。ジャスコはもともと女性が多かったのですが、それでもいろいろありましたね。当時、男性の職場と女性の職場というのはなんとなくはありましたしね。レジは女性だとか、食品売り場は男性だとか。資格試験も、ジャスコは受けてはダメだとかはありませんでしたし、女性の昇進はここまでとか一切なかったんですけど、なんとなく「女性がこれ以上、昇進するのは恥ずかしいことだ」みたいなのが店の風土としてありましたよね。店にもよると思うんですが。
―――なんとなく、の雰囲気があったんですね?
食品の商品部の本部長になった時、仕入れのところは圧倒的に男性社会でしたので、着任した時は相当ビックリされました。他社の人に言われたんですけど、「ジャスコって人材がいないんですか?」「女性が商品の本部長するなんて人材不足なんですか?」って。そう言われてビックリしました。そんな考え方をする人もいるんだなって。周囲の人たちも最初は遠目だったし、距離感を持って「お手並み拝見」という見方をされているのもわかっていました。
―――「女性には無理だと思った」と?
でも、2~3か月経つと「最初はこんな考え方をするんだとか、新しい考え方がどんどん入ってきて戸惑ったんだけど、段々とそれもおもしろいんじゃないかと思い始めてきて。やってみたらおもしろいし成果も出た」などと言われました。「いままでにない考え方の人が来て、最初はすごく戸惑ったけど、絶対に無理だとも思った。けれども、一緒に仕事をしてみたらすごくおもしろかった」と言ってくれる人もいました。