■日本のコメの備蓄は20日でなくなる
では有事の場合、日本にどのくらいの備蓄があるのか…。中国と比べながら見てみよう。
日本のコメの備蓄は約100万トン。アメリカの農務省の調べでは、中国は1億1200億トンのコメを備蓄しているという。確かに人口には差があるが、この備蓄だけで全国民をどのくらい養うことができるのか…。
資源・食糧安全研究所の柴田昭夫代表が、独自の推計で生存に必要なコメの量を1日一人430グラムと試算している。これをもとに番組で試算したところ中国は186日、日本は20日で底をつくことになるのだ。

日本の備蓄の考えは、過去の不作になった時のコメの生産量を参考に考え、中国は食糧安全保障の考えで備蓄をとらえている。中国はコメだけでなく、トウモロコシや小麦など世界で備蓄されている量の半量を自国に持っているとみられている。
■「半導体は台湾の“護国神山”」
食糧自給率もエネルギー自給率も日本とほぼ同じでありながら、それに対する直接的な対策よりも全く別の方法で世界を生き抜こうとしているのが、お隣・台湾だ。
台湾は最先端の半導体の製造において世界シェアは実に92%だ。この圧倒的シェアに満足することなく約16兆円を投じて、4企業合わせて20の新工場を建設しようとしている。ちなみに敷地面積の合計は東京ドーム40個分以上だという。
台湾の狙いはどこにあるのか?半導体を専門とする大学院の院長に話を聞いた。
国立台湾大学「重点科技術学院」 闕志達(けつしたつ)院長
「半導体は戦略的資源になっている。全世界の経済にとって台湾の重要性は、ここ1、2年で知ってもらえた。(中略)中国では『台湾を取り戻す、TSMCを奪い取る』という発言もあるが、そうなったら工場が破壊されるだけです。今のウクライナを見ればわかるでしょ。もし台湾でそういうことが起きたら工場が止まる。再稼働まで半年から1年かかる。そうなれば世界のサプライチェーンが終わる。アップルのスマートフォンも出荷されなくなる。使われているのは全部TSMCの半導体ですから。(中略)衝突が起きてから解決するのではなく、世界は未然に防ごうとする。そのため各国は今後台湾に注目するでしょう」

何かあったら半導体が手に入らない。だから世界各国が台湾有事を許さないだろうという、まさに新時代の安全保障政策だ。国際政治が専門の鈴木教授は言う。
東京大学公共政策大学院 鈴木一人教授
「台湾では半導体を護国神山と呼ぶ。国を守る神様の山ですよ。元は台湾の南北を貫く中央山脈のことなんですが、まさに自らを守るために台湾は半導体に力を入れた。しかも世界がそれに依存している。つまり世界にとって不可欠な存在になることによって自分たちを守る」
明星大学 細川昌彦教授
「キーワードは“不可欠な存在”になること。そのために限られた人材と資金リソースをどこに投じるか、それを見定める戦略が大事になる。台湾にとってはそれが半導体だった」
世界にとって不可欠な存在であれば、世界が守ってくれる。きわめて合理的で、もっともな考え方だが、相手が中国であることに森本氏は懸念を抱く。
国際政治学者 森本敏 元防衛大臣
「中国は合理的であるかわからない。(中略)私が中国のリーダーだったら、台湾の持ってる半導体のノウハウと資源をそっくりそのまま手に入れることはできないか考える。それができれば中国は圧倒的に強くなる。中国は2~3日でサイバーとかを使って、武力ではなく台湾の半導体を占有したら…そういう道もないわけではない。そのこともあって台湾は、半導体の工場を日本やアメリカに分散して生き残りを図っているんじゃないか」
(BS-TBS 『報道1930』 6月22日放送より)

















