10月15日にMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ)が東京・国立競技場を発着点とする42.195kmのコースで開催される。MGCは東京五輪前の19年に始まった、上位2選手が翌年の五輪代表に決定する選考レース。以前のような複数の選考会から代表が選ばれるのでなく、一発勝負的な要素が強い。4年前がそうだったように、火花が散るような激しいレースが期待できる。
そのMGCに出場する男子有力選手の特徴を紹介していく。4人目は前回のMGCで4位に入った大塚祥平(29、九電工)。優勝や日本人トップはないが、安定性は極めて高い。

■大塚祥平プロフィールと成績
1994年8月13日生まれ
大分城南中(大分)→大分東明高(大分)→駒澤大

【マラソン全成績(カッコ内は日本人順位)】
▼2017年3月5日
 びわ湖16位(12位)2時間15分10秒
▼2018年2月4日
 別大3位(2位)2時間10分12秒
▼2018年8月26日
 北海道4位(3位)2時間12分07秒
▼2019年3月3日
 東京11位(7位)2時間12分36秒
▼2019年9月15日
 MGC4位(4位)2時間11分58秒
▼2020年3月8日
 びわ湖30位(20位)2時間15分36秒
▼2020年12月6日
 福岡国際2位(2位)2時間07分38秒
▼2021年12月5日
 福岡国際4位(2位)2時間08分33秒
▼2023年2月26日
 大阪8位(3位)2時間06分57秒

4位で満足していた前回MGCと、代表を目標に走る今回

4年前のMGCは4位だった。

1位・2時間11分28秒 中村匠吾(富士通)
2位・2時間11分36秒 服部勇馬(トヨタ自動車)
3位・2時間11分41秒 大迫傑(Nike)
4位・2時間11分58秒 大塚祥平(九電工)

MGCの結果で東京五輪の補欠に選ばれた。3位の大迫とは17秒差。代表にあと少しで手が届いたが、大塚自身はそこまでの力はないと考えていた。
しかしこの4年間で、特に直近3レースは日本人2位、2位、3位と安定した戦績を残し続けた。4年前は2時間10分台だったタイムも2時間6分台に入った。九電工の綾部健二総監督は前回MGCとの違いを次のように話す。

「優勝した中村選手たちの集団に追いついたときも、そこまで積極的な走りではありませんでした。39km過ぎに中村選手がスパートしたときはまったく反応できなかった。上位3人より自分は格下、という意識だったのでしょう。4位で満足していました。しかし今回は代表を取る、という気持ちを強く持っています。そこが一番、4年間で変わりました」

安定感がある大塚の課題は、勝負に勝ちきること。勝負に貪欲になったことで、大塚のレースに変化が現れるかどうか。

駒澤大時代は駅伝で安定して区間上位に

大塚の初マラソンは駒澤大学4年時、卒業直前のびわ湖マラソンだった。
駒澤大は前回MGC優勝の中村や西山雄介(28、トヨタ自動車)、其田健也(30、JR東日本)のようにスピード型の選手もマラソン選手に成長しているが、大塚や山下一貴(26、三菱重工)、二岡康平(29、中電工)のようにスタミナ型の選手も多い。大八木弘明総監督は選手のタイプを見て、強くなるアプローチ法をスピード練習中心の選手と、スタミナ練習中心の選手に分けて育成してきた。

スタミナ型の選手は練習状況を見ながら、可能な選手は在学中に初マラソンに挑戦する。00年に日本記録を出した藤田敦史(現駒澤大監督)らが確立したパターンだ。大塚も在学中にマラソンに出場。その時は大八木総監督(当時監督)の期待を下回ったが、卒業後の活躍で期待に応えている。

大塚は大学3年時に10000mで28分34秒31を出している。スタミナ型ではあるが、スピードもないわけではない、という選手だった(山下も同様だった)。
箱根駅伝5区(20.8km。山登り区間)の区間賞が学生時代の代表的な戦績とされているが、安定感こそが特徴だった。全日本大学駅伝最長区間の8区(19.7km)で3、4年時に連続区間3位。出雲全日本大学選抜駅伝6区(10.2km)でも連続区間4位だった。大八木総監督によれば距離走(練習メニューの種類で30kmや40kmなど。レースより遅いペースで走るが、距離が長いので負荷は大きい)がしっかりできたという。