元トリマー側の過失認めるも… 賠償額は“相場の範囲内”

大阪地裁は9月12日、事故原因についてはトリマーだった男性の主張を認め、「台から前足を踏み外して喉にハサミの刃体が刺さったが、犬の頭が陰になっていたため、刺さった瞬間を目視できなかった。受傷の状況を獣医に説明できなかったのはやむを得ない面がある」と結論付けた。

一方で、「ハサミの切っ先を犬の体に向けないようにしたり、首輪を付けて固定したりすることなど、受傷の防止策を一切採らなかった点で過失は大きい」と批判。さらに「獣医の治療について不適切な点が全くなかったとはいえないが、別の治療を受けていれば死を回避できたということはできない」として、事故とティファニーの死の因果関係を認めた。

ただ、「トリマーについて、獣医と同レベルの高度の注意義務が課されているとはいえない」として、故意と同等とみなされる「重過失」であるとは認めなかった。

また、賠償額についてはドライな判断を下した。まず葬儀関係費分の賠償について、「愛玩動物を飼育する限り、死んだ際の葬儀関係費は必ず負担するはずであるから、被告の不法行為で生じた損害とは認められない」として請求を退けた。

また、慰謝料額についても、Aさん側が求めていたのは1人あたり100万円・計300万円(Aさん・妻・娘の3人分)だったが、「ティファニーを購入した費用(40万円弱)を大幅に超過する金額は肯定できない」として、1人当たり10万円を基準とした。

最終的に大阪地裁は、トリマーだった男性に対し、Aさん家族に計39万6千円を支払うよう命じた。代理人弁護士によると、ペットの死亡事案での賠償額としては“これまでの判例の相場の範囲内で、至って普通”だという。

判決宣告後、Aさんも落胆を隠せなかった。

Aさん
「ペットは物じゃなくて家族なんですよね。そこに対する言及が判決で一切示されていないのは非常に不満に思っています」
「額にこだわりはなかったが、たったこれだけのものなのかという思い。ガッカリ感が大きいですね。お金がたくさん欲しいとかではなくて、この裁判の価値がどういうものだったのかという点で期待感はあったので…」

Aさんは控訴も含め、今後の対応を検討している。

(MBS司法担当 松本陸)