「人が空に舞い上がった」“火災旋風”の実験

JNNでは、被服廠跡で何が起きたのかを検証するため、専門家の監修の元、火災実験を行いました。

実験を監修 関本孝三 技術師
「当時は木密住宅が密集していました。空いているところが広場。(広場に)大火災旋風ができて、何万人もの人が死んでしまった」

実験では、サーモ映像も撮影できる最新のドローンを投入。液体燃料に火をつけてから、しばらくするとーー

向かって右側で炎が渦を巻き、いとも簡単に火災旋風が起きました。高温の炎で上昇気流が発生。周りの空気が巻き込まれ、回転する風の渦ができるのです。

ドローンで見ると、火が付いている場所から離れたところにまで、火災旋風が移動していることが確認できます。

別の角度から見ると、左奥でも火災旋風が発生。右の方向にゆっくりと移動し、また戻ってくる様子がわかります。

火災旋風は住宅街を移動して、家々を焼き尽くすと言われています。火災旋風が恐れられる所以です。

火災のメカニズムに詳しい専門家はーー

実験を監修 東京理科大学 桑名一徳 教授
「建物(の模型)があることによって、風の流れが建物の模型がない場合と比べると、かなり複雑になっているように感じました。いろいろな所で火災旋風が発生する原因につながるかもしれないと感じました」

火災旋風は、人をも吹き飛ばします。

証言テープの女性
「人が飛んで空に舞い上がるのも見ましたね。その間に兄弟2人が飛んでいっちゃったんです。(母親は『ここでみんなで死ぬよりほかはないから」と言って、じっとしていたんですけど、妹に火の粉が降りかかって、熱がるんです。母が見かねて、『じゃあ逃げるだけ逃げてみよう』と。あっち行きこっち行きして、這っていたんですけどね』

火災旋風に吹き飛ばされた兄弟2人とは、二度と会うことはありませんでした。
ほかにも、火災旋風に関する証言があります。

証言テープの女性
「本当に人が飛ぶのを見ましたよ。ぴゅーっと。それで竜巻が、それがひどかったんです。周りが全部真っ赤で、もう死人の山で『苦しい』『助けてくれ』『水くれ』って、もう阿鼻叫喚なんですよね。そこら中、死人の山で」

実験を進めると、不思議な現象がーー

紙の破片が回転しながらカメラに近づいてきます。避難場所を模した、火が来ないはずの広場で、風が渦を巻き移動していく。これは最も危険な現象「見えない火災旋風」

海外でも、その様子が捉えられたことがあります。アメリカの砂漠で行われたイベントの映像。燃えている巨大なオブジェの脇から、竜巻が次々と生まれ、砂漠の砂を巻き上げて移動していくのがわかります。これが“見えない火災旋風”です。

東京理科大学 桑名教授
「見えない・炎を伴わない火災旋風も、十分熱い場合があります。動いていきますから、炎が無いからといって何も起きないわけではないです」

証言テープにも「見えない火災旋風」が語られていました。

証言テープの女性
「太陽が真っ赤になっちゃったんです。「あ、太陽が真っ赤になった」なんて言っているうちに、ぶわーっと風が吹いてきたんです。その風が来て、砂塵を巻き上げるんですね。痛くていらんないんですよ」「熱いと思いましてね。大八車・タンス・布団が落ちてくる」

内閣府は、今後30年以内に70%程度の確率で起きるとされる首都直下地震で、火災旋風が発生する恐れを指摘しています。決して、昔の出来事ではないのです。