「裏切り者」プリゴジン氏に恐れを抱いたプーチン氏

2018年の大統領選前に公開された2時間のドキュメンタリー映画『プーチン』。インタビュアーとプーチン氏との間に次のようなやりとりがある。

「あなたは人の過ちを許すことができますか?」
「できます。しかし、すべてではない」
「許せないのは何ですか?」
「裏切りです」

「裏切者は絶対に許さない」…これはプーチン氏がかつて所属したKGB=国家保安委員会とその後継機関であるFSB=連邦保安局の“掟”とされる。

プーチン大統領

プリゴジン氏と親交のあったチェチェン共和国のカディロフ首長は「個人的な野心を捨てて国家の最重要事項を優先するように頼んだが、彼には今ここで欲しいものを手に入れたいという願望があった」とSNSに投稿し、その死を悼んだ。

一方、ワグネル部隊を率いて南部ロストフ州で蜂起し、モスクワまで200キロの地点まで迫った「プリゴジンの乱」は、プーチン大統領とクレムリンに恐れを抱かせた。

武装反乱の1か月後、独立系メディアが政権の内部情報として伝えたところによると、FSBの事後検証では「もしワグネルが引き返さず、モスクワ中心部に入っていたら、10万人を超える市民が街頭に繰り出して、政変に積極的に参加したと想定される」という。

ロシアは9月10日に統一地方選、半年後の2024年3月に大統領選を控え、「政治の季節」に入る。その前にプリゴジン氏の動きを完全に封じる必要があったのだろう。

プーチン氏の大統領再選は本当に「確実」なのか

ウクライナでの戦況が膠着する中、プーチン氏が秋に総戒厳令を敷いて大統領選を延期するとの見方もあったが、今のところ大統領選は予定通り行われるとみていい。