「百貨店に限らない雇用継続」VS「百貨店での雇用維持」労使で認識にずれ

山本恵里伽キャスター:
まずは改めて背景を整理していきます。去年の11月、親会社のセブン&アイ・ホールディングスがそごう・西武をアメリカの投資ファンドに売却する方針を発表しました。ただ労働組合や地元の豊島区などが反発。売却期限を2度延期するなど、混迷を深めていたわけなんですね。

そして、8月31日の西武池袋本店ではストライキが行われ、全館臨時休業となりました。その最中で、親会社のセブン&アイ・ホールディングスはそごう・西武の売却を決議したわけですね。

小川彩佳キャスター:
ここに至るまでに水面下ではどんなやり取りがあったんでしょうか?

出野陽佳記者:
実はかなりギリギリの交渉が続けられていました。

8月28日:そごう・西武の労働組合がセブン&アイ側にストライキをやると通告。

8月29日:回答期限を迎えるも、セブン側から売却取りやめの連絡はなし。

一方で、労使双方ともにストライキはできれば回避したいという思いがあったため、水面下では夜中もやり取りがあり、結局、交渉は30日の朝も続けられました。

8月30日:午前中に労働組合の委員長とセブン&アイの井坂社長が電話で協議

本当にギリギリの交渉が行われていたのですが、結局、セブン側が9月1日に売却するという姿勢は変わらないとして、ストライキの決行が決まったということなんです。

小川キャスター:
ギリギリの交渉ということですけれども、この売却で心配なのが、雇用の問題ですよね。百貨店で働く方々は今後どうなっていくんでしょうか。

出野記者:
そもそも雇用の維持をめぐっては、セブン&アイとそごう・西武の労働組合で認識のズレがありました。雇用の問題について、セブン&アイの井坂社長は新たなオーナーである投資ファンドや、セブン&アイのグループ会社における雇用の受け皿の準備も含めて、雇用の継続を図ると説明していました。

ただ、これは必ずしも“百貨店に限らない形での雇用継続”を意味しています。

一方で、そごう・西武の労働組合が求める雇用の維持というのは、あくまで“百貨店での雇用維持”ということで、一口に雇用といっても、実はこの部分に最初からズレがあったということなんですね。

売却後にヨドバシカメラが今の店舗の大部分に出店をしたり、百貨店の売り場が縮小して、高級ブランドが出ていったりすれば、組合としては、やはり働く場がなくなるという理解でいるんですね。

なので、9月1日に売却が完了した時点で、親会社はセブン&アイからファンドに変わってしまうわけですから、こうしたずれを解消して交渉ができるのかどうか、不透明な状況です。