「娘の遺骨を探してきます」祖父・田川元市長は長女を探しに浦上へ

智子さんの父・田川元市長は、風頭の方に逃げるよう言い残すと、三菱兵器大橋工場に学徒動員されていた長女・恵子さんを探しに、浦上方面へと向かいます。

その時の様子を、親交のあった裁判所の所長が書き残しています。
「ちょうど田川務弁護士が来合わせて『今から大橋の三菱兵器に出かける』と言っている。
『たくさんの死体が横たわって焼けているそうです。私の娘もこの工場に行って今朝まで帰らんので、もう死んでいると思います。せめて娘の遺骨を探してきます。これだけが今となっては、父親の勤めと考えます』」(「雅子斃れず」より)

無残に破壊された工場は『死屍累々』『惨状は言語を絶する』と記録されています。

しかし、恵子さんは生きていました。背中一面にガラスが突き刺さったまま長与に運ばれていたのです。

「父はかなり探し回ったみたいです。そしたら田川さんのお嬢さんだと思うけど、駅に寝てらっしゃる方が1人いるって。もう全然、体起こせないし。恵子姉ちゃんが歩き始めたのが、何か月たってからだったですかね…」