ーー理解を求めるために“歳費が100万もないのだから”と発言した結果、国民からすると、感覚が違うのでは?と捉えられてしまったと。

後藤部長:
そうです。衆院議長として、国民と感覚がずれているのはいかがなものか?というところですね。そしてこの減らされる選挙区ですが、自民党が強いところなんですね。

ーー例えば?

後藤部長:
和歌山は二階前幹事長、広島は岸田総理の選挙区です。そして、特に注目したいのが山口県です。山口県は現在4つの選挙区を抱えており、保守王国と言われています。安倍元総理や、安倍氏の弟の岸防衛大臣、岸田派の幹部の林芳正外務大臣など、現職閣僚や総理経験者がいます。この他にも高村元副総裁の子息である高村正大議員らもいます。この山口選挙区は現状の4から3に減る見通しとなっていますから、4人の現職の誰かが別の選挙区、あるいは比例に回らなければならない事態も考えられる。

ーー大物と言われる議員が多い選挙区の調整は相当難しそうですね。

後藤部長:
そうですね。自民党が強い地域は調整にかなり手間取るなと想像できます。そしてこの区割りは6月25日までに総理の諮問機関である“区割り審議会”が改定案を作成し、岸田総理に勧告を行います。おそらく国会が閉会する15日以降の早い時期に改定案を出さなければいけないということになります。そして改定案を踏まえて、政府側はこうした区割りにしますという公職選挙法改正の法案を作り、速やかに成立させなければいけないでしょうから、次の国会で審議されると思います。

ーー新しい区割り案は順調に進められるのでしょうか?

後藤部長:
進む前提です。国会で議論し、各党からよほど異議が出てこない限りはその通りになると思います。自民党内には細田氏のように、一票の格差是正のための10増10減を批判的に見ている人はいます。自民党は地方に強いですから、10増10減だと自身の選挙区に影響が出る議員もいます。ですので、実は細田さんの言動は自民党内でかなりの支持を得ていたのです。
しかし、一連の失言と“セクハラ疑惑”、そして不信任案が出ることによって、仮に細田氏の10増10減に対する批判的な考えに「なるほど」という部分があったとしても、今の“セクハラ疑惑”に応えられていない細田氏には説得力がないと思いますし、ましてや衆院議長がそういったことに踏み込んでいいのかということになります。引き続き衆院議長であるとしたならば、政府が出す区割りの改正案の審議を細田氏がやらなければならない。

ーー衆院議長ですからね。

後藤部長:
そういった意味でも不信任案の行方は、選挙の在り方も含め非常に大きな影響を及ぼすのではないかと思います。

ーー後藤部長は細田氏の身の処し方についてどう見ているか?

後藤部長:
少なくとも説明責任は問われると思います。これだけ事実無根であると主張するのであれば、何が自分にとっての真実なのか?質問に対して公の場で、自分の言葉で真摯に対応することが必要ではないかと思います。

ーー選挙の区割りにのっとって投票するのは私たちですから。

後藤部長:
地方だけでなく、都市部でも区割りが変わることで自分がこれまで投票していた候補者が変わるかもしれないということも予想されます。

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後藤俊広
TBSテレビ 報道局政治部長

小泉純一郎内閣時から政治報道に携わる。郵政民営化を巡る自民党の小泉VS民営化反対派の闘いや自民→民主、民主→自民の2度の政権交代などを現場記者として取材する。趣味はプロ野球観戦で中日ドラゴンズの落合博満元監督を取り上げた「嫌われた監督」が座右の書

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