同床異夢、それでも「旅を共に」

今回、岸田総理は、中東諸国に脱炭素化という「グローバル・グリーン・ジャーニー」に共に乗り出そう、と呼びかけた。日本にとっては、中東の脱炭素化、産業の多角化、気候変動対策を後押しすることは、ビジネスチャンスにつながる。今回の訪問には、日本から数十社の企業・団体が「経済ミッション」として同行した。経済ミッションを引き連れた“トップセールス”は、岸田政権になってからは初めてだ。ミッションには、商社や金融機関など大手企業に加え、クリーンエネルギー分野のスタートアップも含まれた。たとえばペットボトルなどを再資源化する企業。次世代燃料であるアンモニア新合成技術を持つベンチャー。環境にやさしいコンクリート製造技術を持つ会社…。中東でのビジネスが、伝統的な化石燃料関連以外の分野に広がっていることを十分に感じさせる顔ぶれだった。

一連の訪問の結果、先端技術や半導体などの分野で、7本の二国間協力に関する文書と、のべ50本以上の企業間の覚書が交わされた。訪問最終日、記者会見した総理は、こう強調した。

「エネルギー、多角的な経済関係、安全保障、そしてソフトパワー交流など、幅広い分野で、重層的な協力を進めること(中略)を確認できたことは、大変有意義でした」

同床異夢であれ、旅を呼びかけた総理の“トップセールス”は、双方にメリットがあったと言えそうだ。