後継候補の一人は、国民の人気が高かった国防相、セルゲイ・イワノフ氏。プーチン氏の大学の同窓生で、旧KGB出身。

もう一人は、第一副首相、ドミトリー・メドベージェフ氏。13歳年下だが、すでにプーチン氏に16年間仕えていた。

後継話が盛り上がったのは下院選挙の年。国民人気のあるイワノフ氏をメドベージェフ氏と同じ副首相にして注目を集めたのだ。専門家の間でも下馬評でもイワノフ氏有力とされていた。しかし、大統領選挙の前にある下院で野党に大勝利したプーチン氏が、その直後に後継に指名したのは、メドベージェフ氏だった。

防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「私もイワノフさんだと思っていた。でも蓋を開けたらメドベージェフさんを指名して自分は首相に引き下がる。これは、後継者というよりも自分が首相に就いた時、誰が大統領だといいのかっていう観点なんです」
首相に引き下がっても実権は手放したくなかったプーチン氏。では何故イワノフ氏ではいけなかったのだろうか?
朝日新聞 駒木明義 論説委員
「結局のところプーチンはイワノフを恐れたんだと思う。彼が大統領になったら実権を握られる。有能だし、KGB出身で軍やFSB(連邦保安局)など“力の省庁”も掌握していくだろう、自分より巧く。これを大変恐れたんだと思う」
この時から“自分の地位を脅かす芽は摘んでおく”というトップの定石どおりに歩んできたプーチン氏。国内でウクライナ侵攻に批判的な空気が生まれてきた今、その傾向は今後ますます強くなるに違いない。
(BS-TBS 『報道1930』 5月26日放送より)