「汗をかかんとだめよと言われ…」現金を配るに至った経緯

(弁護人)
「河井案里 さんが立候補した4年前の参議院選挙の情勢について、厳しい選挙だと認識していましたか?」
(克行氏)
「間違っています。4年前は自民党本部から公認の金看板も得ました。公認は際立って遅く、参議院選挙まであと数か月、その段階で自民党が公認をしたこと自体が、河井案里に十分がんばれば当選できるという確信があったからこそです」
「当時の安倍総理大臣の自民党が広島で2議席を獲得するという党の方針に広島県連が耳を貸さない態度に業を煮やして、自分の地元の秘書団を連日、県内各地に送り込みました。党の大義の浸透を図る目的でした。安倍総裁の広島での自民党2議席獲得にかける強い思いと、河井案里への強い期待を具体的行動で示していただいたことも当選への大きな確信を得ることができました」
(弁護人)
「県連の溝手氏のみを支援するという姿勢は、河井案里氏の選挙情勢に影響がありましたか?」
(克行氏)
「私の公判でも地方議員が『県連が支援しないから河井案里は厳しいと思った』と言いましたが、失礼ながらこの20年間、ぬるま湯に浸かったような広島県の参議院選挙しか知らない地方議員が、複数立候補者を立てたときの党勢拡大活動のあり方が十分に分かるはずがないと思いました」
「党本部の幹部は口をそろえて、『県連が案里さんをいじめればいじめるほど、むしろ県連への批判、案里さんへの同情が湧き上がって支持が広がる。県連の姿勢は案里さんへの応援と考えていたら』と、一笑に付していました」

(弁護人)
「あなたが県連会長への意欲を示したことはありますか?」
(克行氏)
「あります。2018年の県連常任顧問会議で、汗を流す覚悟があると言いました」
(弁護人)
「反応はありましたか?」
(克行氏)
「なかったですね。わたしより議員の在職年数が少ない方が会長になって、衝撃を受けました」
(弁護人)
「それについて、誰かに相談しましたか?」
(克行氏)
「県議会のベテランの先生に相談しました。すると『ふだん、国会議員は東京にいて、特にあなたは総理補佐官で海外を飛び回るイメージが強い。もっと地元の議員から克行を応援しようと声が上がるように、議員を回って汗をかかんとだめよ』と言われました」
(弁護人)
「アドバイスは実現しましたか?」
(克行氏)
「その出来事の次の選挙が2019年の統一地方選でした。これまで以上に積極的に県内を回って、陣中見舞いを渡して、仲間づくり、わたしへの理解を広めないといけないと痛切に感じました」
一方で、その現金の趣旨については、4人の被告人全員に対して「河井案里の当選を得たい気持ちが全くなかったわけではない」としつつも、「現金を配っているときに違法性の認識はなかった」などと説明しました。