■「どこも受け入れてもらえないから」ロシア軍のインフラ攻撃がもたらした実情

続いて、JNNの記者はハルキウ市の北東部にある、サルティフカ地区に入った。激しい攻撃を受け、いまも軍の許可がなければ入ることができない場所だ。
ゴーストタウンと化した団地の一角、屋外で料理の煮炊きをしていた女性がいた。ニナ・ウラジミロブナさん、89歳だ。

ニナさん
「家ではガスも電気もないので、焚火で食事をつくっています。いま作ったところです」
ーー電気やガスはいつから使えるようになりますか?
ニナさん
「そんな話は聞きません。ここは戦闘の最前線だったので、ガスや電気の設備が破壊されてしまい、復旧はとても大変です」
開戦当初から、水も使えなくなり、シャワーを浴びることもできていないという。ニナさんが団地の部屋まで案内してくれた。
ニナさん
「私は喘息持ちで、めまいもあって大変です。だから、どこにも避難せずここに残っています。私のような人間は、どこも受け入れてもらえないからね」
団地の棟にはもう2人しか住んでいないという。部屋は3階。停電でエレベーターが動いていないため、階段をゆっくり上る。

ニナさんは肩で息をしながら、ようやく部屋に到着する。
ハルキウ市内の工場で37年間働き、いまはネコ2匹と暮らしているという、ニナさん。窓からは被害を受けた向かいの建物が見える。
ボランティアからスープをもらうため、再び苦労しながら階段を下りて外出。ボランティアが入れる地域までゆっくり歩いていく。
ロシア軍によるインフラ攻撃で最も苦しむのは、ニナさんのような人たちだ。
部屋に帰っていくニナさん。何度も何度も振り返り、手を振ってくれていた。

(報道特集 5月28日放送)
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