開戦当初からロシアが猛攻をしかけた、ウクライナ東部にある第2の都市ハルキウ。ロシア軍が撤退したものの、いまも砲撃の音がやまないハルキウをJNNの記者が取材。避難もままならず苦しむ、子どもや高齢者の姿が多数あった。
■取材中も鳴り響く爆発音・・・残された高齢者や子どもの声を聞く

ロシアとの国境までわずか22キロ、ハルキウ近郊の村・コトゥジフカ。ロシア軍に42日間占領され、砲撃などで7人が死亡したという。
多くの住民が去った団地。部屋の窓から顔を出す老夫婦が・・・

ーー何か問題はありますか?
夫・ユーリさん(73)「もちろん」
ーー具体的には?
妻・タチアナさん(71)「血圧と心臓」
ーー薬は十分にある?
タチアナさん
「自分たちで手に入れた分しかありません。血圧は180~190なのに薬がないのです。残っている薬を飲んでいます」
ーー他の場所に避難できないのか?
タチアナさん
「どこにもいきたくないです」
取材のさなか、付近に響く爆発音。ウクライナ軍の砲撃とみられる。
ーー怖くない?
タチアナさん
「怖くない。もう怖いものなしです。攻撃があったときは恐ろしかったけれど、もう大丈夫」
ロシア軍は撤退したものの、砲弾は飛び交っているため、村にある保育園の地下室では住民がいまだに避難生活を続けていた。
ーーここで何人ぐらい住んでいますか?
コンスタンティンさん(38)
「地下室で、ですか?町で、ですか?地下室なら24人です」
ほんのわずかな取材の最中も、砲撃音が鳴り止まない。ウクライナ軍が押し返しているとはいえ、まだ人々の生活のすぐ近くで戦闘が続いているのだ。
地下室を見せてもらうと・・・

コンスタンティンさん
「2月24日からここにいます。元々ここにあったストーブを使えるようにしました」
多い時には、子ども40人を含む140人あまりがこの地下室に避難していたという。
コンスタンティンさん
「鳥やペットもいるのでまるでノアの箱舟です。犬もいました」

地下室を出ると、上の階にある保育園の教室も大きな被害を受けていた。コンスタンティンさんによると、戦車の攻撃を受けたということだった。天井には大きな穴が空いている。廊下には、平和だった頃に撮られた子どもたちの写真が飾られたままだった。

そして近くにある、コンスタンティンさんの自宅は・・・
コンスタンティンさん
「ほら見て、どうなっているか・・・破壊されました」
5月2日頃に砲撃を受けたという自宅。さらに話を聞こうとすると・・・相次いで爆発音が鳴り響く。
ーー何人で暮らしていた?
コンスタンティンさん
「4つの家族が暮らしていました」
ーーこの家はどうするつもりですか?
コンスタンティンさん
「正直言ってまだわかりません。しばらくして、回復してから考えます」

この取材中にも、近くにロシア軍の砲弾がさく裂。コンスタンティンさんも思わずうずくまる。安全のため取材を中断し、地下室に戻ろうとする際にも爆発音が鳴り響く。
地下室は住民が避難してきたのか、人が増えていた。そこには8歳のチモフィくんの姿も。

ーー家はどうなりましたか?
チモフィくん
「窓が割れた。ドアや屋根も壊された」
以前は格闘技を習っていたというチモフィくん。まもなくスイスに避難するという。スイスに行くことついて、楽しみだと話す。しかし、記者がその理由を尋ねると・・・
チモフィくん
「分からない」
チモフィくんの祖母
「ここから脱出したいと言って」
チモフィくん
「ここから脱出したい」
チモフィくんの祖母
「スイスではどうなるか分からないけど、少なくとも戦争はない。それだけです」