池上さん:
一方で、煩雑な手続きさえ乗り越えてしまえば、支援金が出たり、国民健康保険を使えたり、児童手当をもらえたりという点では日本はすごく手厚い国だと思います。もちろん受け入れている人数が違うので一概には言えませんが、例えばポーランドにいたらこのような生活支援は受けられません。
インナさん一家は現在は池上さんが提供している住宅で暮らしていますが、6月にも静岡県の公営住宅に移り住み、インナさんはそこで仕事を始めることを希望しています。ニキータさんら子供たちも秋からは日本の学校に通うと言います。池上さんたちの懸命なサポートもあり今は日本で安心して生活ができていると話します。
■外国人慣れしていない日本人
ーー今回支援をして良かったと思うのはどういう時ですか
池上さん:
インナたちが笑顔になっている瞬間ですね。ミサイルが飛び交うキーウから命がけで脱出してきた彼女たちに安心できる生活を提供することが最大のミッションだと思って寄り添っているので。
忘れてはいけないのは、ウクライナに限らず世界には本当に大変な人たちがいて、そういう人たちにこそ手が届きにくかったりします。メディアも入れなかったり、そもそも通信手段を持っていなかったり。そういう人たちのことを忘れてはいけないと思います。でも、自分たちができる範囲で一家族でも救える命が救えるんだったらいいなと思っています。
ーー日本で人道的な受け入れの門戸を広げていくには何が必要だと思いますか
日本人はそもそも外国人慣れしていない人が多いですよね。戦争ではなくても、観光客であっても、もう少し慣れていくということが大切なんじゃないかなと思っています。今回のことで避難民に限らず日本語ができない外国人が住むのがいかに大変かということを痛感しました。もっと外国人にもわかりやすいシンプルな仕組みがあったら良いなと。日本の手続きの書類の多さなどのアナログさも、もう少し外国人に慣れていくということで変わっていくのではないでしょうか。
■取材を終えて
「避難民に限らず外国人にもわかりやすいシンプルな仕組み」私が外国人として生活をしていたイギリスは、ウクライナからの避難民も多数受け入れています。池上さんの話を聞いて思い出したのは、ワクチン接種の予約一つとってもスマートフォンのアプリから簡単にできて、英語が苦手な外国人である私には助かるなと感じていたことです。一見関係ないように思える「日本の紙文化」と「避難民支援」。シンプルな仕組みがすべての人にとって優しい社会には必要なのかもしれません。

岡村仁美
TBSアナウンサー。2005年にTBSテレビ入社。『報道特集』『時事放談』や『Nスタ(日曜)』などを担当し、2015年からは報道局社会部兼務。社会部記者として司法クラブ、宮内庁、国土交通省を担当。2020年夏から2022年2月まで家族の都合でイギリス・ロンドンで生活。2022年3月にTBSアナウンスセンターに復職。双子の母でもある。