池上さん:
彼女たちはポーランドに脱出する際には、パスポートを見せてシステム上で情報を確認するだけで、手書きの書類は一切なしで入国できたそうです。しかし、来日に向けては、ビザを取るために必要な書類一人につき4枚をPDFからプリントアウトして、それを私が日本で書いて、スキャンしてデータにしてポーランドへ送り、さらにそれをポーランドでプリントアウトして、ワルシャワの日本大使館に紙で提出する。Webサイトで直接記入して申請することはできないのです。デジタル化が中途半端でアナログですよね。
私の場合はたまたまポーランドで活動をしている知人がいて、プリントアウトして大使館に提出するのを案内してもらいましたが、あらゆる手続きをしっかりとサポートしてくれる人がいないと難しいですね。英語版もあるのですが、書類の多さが日本のガラパゴスというか、日本人あるいは日本語ができる人のサポートがないとまさに書類地獄です。
また、コロナ禍で日本に入国するにはPCR検査が必要でした。ワルシャワで検査をする場合も陰性証明書を日本の様式に書き換えなければいけない。それを彼女たちだけでやるのはすごく難しいことです。

■煩雑な手続きさえ乗り越えれば…手厚い支援も
ーー来日してからの生活支援はどんなことをしているのでしょうか
池上さん:
まずは彼らの住環境を整えることです。今は日本での生活にかかるお金はすべて私たちが負担しています。今後、日本財団から支援金をもらえる予定ですが、まだその手続きが済んでいないので。
また、仕事を探すなど日本で生活をしていく上では通信手段が重要だと思います。携帯電話のSIMカードの契約をしに行ったのですが、彼らが持っている一年間の在留資格だと審査がおりない場合があると言われ、私が3人分の契約をしました。
ウクライナからの避難民は90日間の短期滞在のビザで来日し、本人が希望すれば、就労が可能で1年間滞在できる「特定活動」の在留資格に変更できます。この手続きも自分でやるとかなり大変なのですが、行政書士の方がボランティアで代行してくれるということを知りました。来日前から行政書士さんとやりとりをして、来日翌日にはビザ関係の書類を託して手続きをしてもらいました。そのため、インナたちはその日のうちに在留カードを受け取ることができました。
こういった支援は身元保証人がどれだけサポートするかに任されています。私は友人である保証人家族と一緒にチームでサポートしていますが、例えば日本にいる留学生が一人で家族を受け入れるという場合はすごく大変だと想像します。