「情報操作」と「闇の軍隊」でスパイ組織と連携

IRAは2016年のアメリカ大統領選挙でロシアびいきのトランプ氏を勝たせるため、偽情報をインターネットで拡散させたとして摘発された。プリゴジン氏はFBI=米連邦捜査局から25万ドルの懸賞金で指名手配されている。

FBIの手配写真

一方、「闇の軍隊」と呼ばれる民間軍事会社「ワグネル」は、ロシア軍のスパイ組織、参謀総本部情報総局(GRU)と連携し、ロシアが軍事介入するシリアやリビアに雇い兵を投入してきた。今年2月に始まったウクライナ侵攻でも、雇い兵や受刑者らを集めた部隊を参加させて兵員不足のロシア軍を支援している。

ロシアでは雇い兵の存在は法律で認められておらず、クレムリンはもちろん、プリゴジン氏も「ワグネル」との関わりを否定してきた。しかし、9月、プリゴジン氏は声明で「2014年にウクライナ東部ドンバス地方に雇い兵を送るためワグネルを創設した」とついに認めた。ウクライナでの作戦に失敗した軍の現地司令官を名指しで批判して解任に追い込むなど、強硬派の1人として急速に存在感を増している。

ワグネルセンター


今月4日には初の公式事務所となる「ワグネルセンター」をサンクトペテルブルクにオープン。メディアが撮影したガラス張りのビルの映像には、迷彩服姿の男たちが堂々と出入りする様子が映し出されていた。

プリゴジン氏はクレムリンを操る「闇将軍」になるのか?

アメリカのシンクタンク「戦争研究所(ISW)」は、ウクライナ侵攻の混乱に乗じてプリゴジン氏がクレムリン内で権力を確立しつつあるとの分析を示している。ただ、「ワグネル」の元雇い兵でプリゴジン氏の補佐役を務めたことのあるマラート・ガビドゥリン氏はBS-TBS『報道1930』とのインタビューで「民間軍事会社はプリゴジンのビジネスの一部に過ぎない。金儲けのため、占領したドンバス地域の“王様”となって製造業を握りたい。大規模なビジネス計画だ」と指摘している。そして、「この戦争によって政権内部の争いが激化した。彼の活動は自分の地位を強化し、政敵によって潰されることを防ぐためのものだ」とも語った。

ガビドゥリン氏


プーチン氏の祖父、スピリドン・プーチンはソ連の独裁者レーニンとスターリンの別荘で働く料理人だったという。猜疑心の強い独裁者に仕えながら86歳の天寿を全うできたのは、一介の料理人であること以外の“意思”を持たなかったからだろう。果たして、プリゴジン氏の命運やいかに。

TBSテレビ報道局解説委員 緒方 誠