賃金未払い、暴力、パワハラ。外国人労働者への人権侵害を過去何度も引き起こしてきた技能実習制度は5月、政府の有識者の会議によって廃止の方向性が示された。今後は新たな制度について検討が進むが、外国人の受け入れをめぐっては、簡単には解決できそうにない“闇”がある。それは、海外にあって日本の法律が及びにくい、実習生の「送り出し機関」をめぐる根深い問題だ。過剰な接待や、違法行為の提案まで。人権侵害の温床と指摘される“闇”について、複数の関係者から証言を得て、実態に迫った。
「女性が接客する飲食店を用意し日本人を接待」
ベトナムのハノイ市内に日本人が多く宿泊する2つのホテルがある。ここをベトナムの「送り出し機関」のベトナム人関係者が度々訪れるという。売春の場所にも使われるというこれらのホテルに日本側の受け入れ関係者を招待し、こんな依頼をするというのだ。
「私たちから実習生を雇ってください」
「キックバックもします」
送り出し機関は実際に日本人にどうやって接触してくるのか?その実情を知る関係者の1人が貴重な証言をした。埼玉県川口市の監理団体でかつて実習生の受け入れ事業を行っていた、古屋恭平さん。自身は接待や利益供与を受けたことは一切ないとした上で、2017年に送り出し機関の視察のためベトナムを訪れた時のことをこう振り返る。
元監理団体担当者・古屋恭平さん
「送り出し機関側の競争がとにかく激しい。自分たちが集めたベトナム人を日本に送り込むことで、管理費収入が欲しいんです。営業の電話もかかってくるし、過剰な接待もあると聞きます」

当時、古屋さんの監理団体には送り出し機関から営業の電話が頻繁にかかってきていた。古屋さんは、あらかじめ「接待は不要です」と何度も伝えて会社の経費で視察に訪れたが、ある送り出し機関のスタッフからこんな話を耳にしたという。
元監理団体担当者・古屋恭平さん
「日本から来る監理団体の中には、観光気分で来て食事や旅費、夜の女性のお店までも要求してくるとんでもない団体もあると聞きました。同じ日本人として恥ずかしいし、日本に対するイメージを悪くしているのではないか」
法務省の調査によると、送り出し機関には日本の監理団体から実習生1人につき月額7000円程度の「送り出し管理費」が支払われる。こうした手数料収入が彼らの目当ての1つだとみられる。