「残業は時給400円でいい」違法な賃金を提案

取材を進めると、送り出し機関の“闇”は接待だけではなかった。技能実習生を「違法な賃金で安く働かせていい」と持ちかけたケースもあることがわかった。会社の元代表が匿名を条件に、重い口を開いた。

技能実習生を働かせていた会社の元代表
「受け入れを始めた頃、送り出し機関から『残業代は400円でいいですよ』と言われました。実習生を多く送り込みたいがために、企業にとっての好条件をいくらかつけてきたんだと思います」

時給400円は、法律で決められた最低時給の半分以下。もちろん日本では違法行為だ(現在会社は閉鎖)。いくら送り出し機関から申し出があったとしても、元代表に罪の意識はなかったのだろうか。

技能実習生を働かせていた会社の元代表
「外国人技能実習生にとって時給400円は決して安いお金じゃない。違反は違反かもしれないけど、あの子たちが納得できる金額ではあった。そういうケースがこれまで続いてきてるんですよ」

―契約書はあったのか?
「ないない。口約束。でも私のところばかりじゃない」

国が定めたチェック機能をすり抜け

多くの技能実習生を日本に送り込みたい送り出し機関と、できるだけ安く外国人を働かせたい日本の受け入れ企業側が、裏で結んでいた取引。防ぐ手立てはなかったのか。技能実習生の受け入れを行う会社は、外国人技能実習機構という国の組織の調査を定期的に受ける。調査は3年に1回、抜き打ちだ。ところが、違法行為をしていたこの会社は、調査で問題を指摘されることはなかったという。

技能実習生を働かせていた会社の元代表
「チェックされても分からないようにしていた。会社としては問題にならないように色々考える。機構の調査を逃れてきたからここまで来れたんですよ」

本来、途上国への技術移転という「国際貢献」を目的に始まった技能実習制度。しかし、元代表は、こううそぶいた。

技能実習生を働かせていた会社の元代表
「私たちはただ労働者としての受け入れしか考えてないですね。『人手が足りない、人手が足りない』。実習生が入ってきたら「やったー!納期に間に合うぞ」って。これじゃ単純な労働者。我々の素人が考えても、はき違えているところがあると思いますよ」