「恨みや憎しみはなかった」被告に懲役5年
「無職であることに負い目を感じ、友達との関係も絶った」
被告は携帯電話も持っていなかった。
裁判長は、こう尋ねた。
【被告人質問】
ーーお母さんとあなたとの関係、狂気だと思うが、どう思う?
母は普通じゃない人間だったが、自分も普通じゃないことばかりをやった。後悔しています。
ーー暴力をふるわれたお母さんの気持ちは?
自分の息子から無慈悲な暴力をふるわれて、とても苦しかっただろうと思います。
「母親への復讐だったのか」と問われると「恨みや憎しみはなかった」と否定した。検察側は懲役7年を求刑した。
傍聴席では、被告の妹が幼い子どもと一緒に、その様子を見守っていた。

【最終意見陳述】
被告「私の身勝手な行動で母に取り返しのつかないことをしてしまった。母には孫がいて、孫が生きがいで生活していたのに、奪ってしまい、謝っても謝りきれない」
5月19日、懲役5年の実刑判決が言い渡された。
裁判長は「執拗な暴行で被害者の尊い生命が奪われた」と非難する一方で、「酌むことができる事情」として次のように述べた。
裁判長「幼い時から家事全般を担当し、1人を寂しがる被害者に寄り添い、外部との関わりをあまり持たず、基本的に2人で相互依存するような関係で長らく暮らしてきたことが、被告人を歪んだ心理状況に陥らせた」
言い渡し後、裁判長は、法廷で証言した妹らが「あなたの帰りを待っている」と伝えた。
裁判長「お母さんは、あなたが処罰を受けることを望んでいないかもしれない。ただ、今回のことを重く受け止めて下さい。あなたにしっかりしてほしい、それがお母さんの望みかもしれないので忘れないでね。罪と向き合って、あなたらしくやり直してほしい」
被告は「はい…はい」と繰り返し答え、頭を深く下げた。
(TBSテレビ社会部 司法記者クラブ 高橋史子)