■「機会があれば確実にクリミア橋を攻撃する」


ドネツクとルハンシクは取り戻せても、クリミアは難しい。なぜクリミアだけは別なのか?

防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「ロシアは憲法改正して、クリミア半島をロシア連邦の一部として国内の手続きが終わってますから、ウクライナがクリミアを攻撃した場合、これはロシア領内への攻撃とみなす。そういう受け止めになると戦争のフェーズが変わってきて、いわゆる戦争宣言、戒厳令をプーチン大統領が国内で宣言するきっかけになる」

クリミアにはロシアの黒海艦隊があり、防衛戦略の中で最も大事な部分だという。
その中で焦点となるひとつの橋がある。クリミア橋。ロシアとクリミア半島を結ぶ全長約19キロに及ぶヨーロッパで一番長い橋で2014年の3月にクリミアを併合した翌日にプーチン氏が建設を命じた橋だ。開通の式典でプーチン氏はこう語っている…。

「帝政ロシアの皇帝の時代から人々はこの橋を建設することを夢見ていた」

プーチン氏にとってみれば橋もロシア領の一部。この象徴のようなところを攻撃目標にすべきという意見が今ウクライナで上がっているのだ。

ウクライナ国家安全保障防衛評議会 オレクシイ・ダニロフ書記
「機会があれば確実にクリミア橋を攻撃する」

ネット上には“クリミア橋破壊カウントダウン時計”まで登場した。また、元議員の一人は…。

クリミア選出 元国会議員 レファット・チュバロフ氏
「クリミア橋は我が国の領土に存在しているので法的にも道義的にも攻撃する全権はウクライナにある。まさにあの橋を渡ってロシア軍が侵略し、ウクライナの兵士と住民を殺しているのだから…(中略)私はこの戦争の最終地点はクリミアを取り戻すことだと確信している。そうでなければこの戦いは無意味だ」

ウクライナが優勢になれば、国民感情としては当然クリミアも元に戻せ、ということになる。ゼレンスキー大統領は「15年かけて解決する」と言ってはいるが、勝ちが目の前に見えてきた時、こうした国民の声を無視できるのだろうか。

■ウクライナが勝ちすぎるとアメリカは悩ましい…


明海大学 小谷哲男教授
「やり過ぎれば敵はエスカレーションします。ロシアには核兵器という手段が残っているわけですから刺激しすぎないようにしたいという考えはある(中略)それはアメリカもNATOも懸念している」

ロシアが核を使うとなれば、ウクライナとロシアの戦いだけにはとどまらない。つまりアメリカ、NATOとロシアの戦いに発展する可能性もあるのだ。さらに、これまで戦いのため供与された、西側の最新鋭の兵器を持った戦勝国となることへの懸念もあるという。

森本敏 元防衛大臣
「もしもロシアが劣勢で、ウクライナが先頭に勝ったとして外交交渉が始まった場合どういうことになるか、ウクライナには東ヨーロッパで一番の軍備が集まる。今回西側からもらった兵器を返すことはないですから。(中略)東ヨーロッパで飛びぬけて強力な軍事力を持った国になる。周りにどんな政治的軍事的影響をもたらすか…。戦争が終わった後、ウクライナを含む東ヨーロッパの安定をどうやって維持するのか…そういう重大問題にアメリカは直面することにもなる」