■「身寄りのない」避難民には国から生活費支給 それでも残る不安


ウラジーミルさんのような日本に「身寄りのない」避難民は、出入国在留管理庁(入管庁)が用意した「一時滞在」のホテルに滞在している。食事は国が負担し、12歳以上には生活費として1人あたり1日1000円が支給される。今後は入管庁が受け入れ先を調整し、自治体などが提供する住居に移る。

ウラジーミルさん
「いまはホテルにいるのでお金はかかりませんが、ホテルを出たら食費もかかります。それを考えたら今のお金ではまったく足りません。なので日本で仕事がしたいと思います。仕事ができなければ生活していくことができません。」

一方、ホテルを出ると食事は援助されない。生活費として支給されるのは1人あたり1日2400円だ。11歳までの子どもや1世帯で2人目以降は減額される。ホテルから出た後の生活には、経済的な不安が残るという。

■「身寄りのある」避難民には国からの生活費なし


一方で、「身寄りのある」避難民にはさらに切実なケースもある。「身寄りのある避難民」とは日本に来る際のビザ(査証)で、身元保証人となる人がいた避難民のことだ。来日後、身元保証人から支援を受けることが想定されているため、原則、国から生活費が支給されない。「身寄りのある」といっても家族に身元保証人になってもらった人もいれば、遠い知人を頼った人もいる。

4月8日に日本に避難したオルガ・ティーシェンコさん(28)もその1人。もともと日本に身元保証人となれる人はいなかったが、避難民を支援するサイトに支援者として登録していた早稲田大学のアメリカ人教授、ダニエル・ドーラン氏と繋がり、身元保証人になってもらった。政府は公式には「身元保証人」がいない避難民も日本に来られるというが、オルガさんは査証を受ける際にポーランドにある日本大使館でこうした説明は受けておらず、書類に身元保証人を書くことが一番早く避難できる方法だと考えた。結果、日本に「身寄りのある」避難民の扱いで来日することになった。

ウクライナからの避難民・オルガさん


避難民 オルガさん
「いまお金は少ししかありません、将来が不安です。日本への渡航費もドーラン教授に払ってもらった。ドーラン教授に生活費を頼っている状況です。生活費のために早く働きたい、すぐに仕事を見つけたい」

オルガさんはもともと赤の他人だったドーラン教授の支援に頼りっぱなしであることに引け目を感じている。身寄りがあっても生活費をもらえる日本財団の支援に応募したが、来日して1か月以上経ってももらえるという決定は受け取っていない。金額は年間で100万円。それでやっていけるのかの見通しも立たない。

■支援内容が「国や自治体でバラバラ」「コーディネーター的存在がほしい」


神奈川県茅ヶ崎市で「Shonanloco(湘南ロコ)」というボランティア団体を作り、避難民を金銭面からも支援するドーラン教授は「身寄りのあるなし」で、国の支援に差があることに疑問を感じている。

オルガさんと身元保証人のドーラン教授


ドーラン教授
「避難民が日本に身寄りがあると、国からの支援金を受けられないというのは知りませんでした。私は身元保証人になりましたが、オルガさんの査証の際に必要だと思ったからです。同じ避難民なのに身寄りがあると経済的な支援がない、なんとも変な制度だと思います」

ドーラン教授はそれ以外にも、避難民支援で困ることがあるという。

「日本は全体としては避難民支援に前向きに取り組んでいます。しかし問題はその中身が国や自治体、企業によってバラバラで、わかりにくいことです。避難民や我々支援者にとって必要なものは、様々な支援の情報を1つにまとめて提示してくれるコーディネーターです。例えばワクチン担当大臣をつとめた河野太郎氏のような存在を、避難民支援でもつくれないのでしょうか」

ドーラン教授は避難民支援が抱える課題を指摘する