発送電分離 資本関係も解消する「所有権分離」求める声も

不正閲覧問題を受け関電は、2月下旬~4月末までテレビCMの放映も含め“能動的な営業活動”を自粛している。しかし、“2か月の営業自粛などでは足りない”と、より厳しい処分を求める意見書を国に提出したのが、電気料金の比較サイトを運営する「ENECHANGE(エネチェンジ)」だ。

(ENECHANGE 千島亨太執行役員)
「(小売自由化や発送電分離といった)電力システム改革の信用を損なったという意味では、それを徹底的に解明して、改めて再スタートを切るには1ヶ月2ヶ月では、とてもじゃないけど足りないと思っています。原因究明もまだできていません。 改善できる期間というのは6か月ぐらい(の能動的な営業活動停止)を取るべきだと思って、今回の提言を出しています」
今、電力業界ってウクライナ情勢などで燃料価格が上がってしまって、電気代の値上げをお願いする立場じゃないですか。国民の皆さんに一定の理解、値上げの痛みをお願いしつつ、お願いしている企業が裏側では悪いことをしている、不正なことをやっている。これはちょっと理屈に合わないと思うんですよね。真摯にオペレーションをしっかりと回すことができて、初めて値上げなどが履行されるべきだと思っています

一連の不正閲覧問題を受け、罰金増額など、電気事業法上の罰則強化を求める声が上がっている。さらに、送配電会社の独立を徹底するために、法的に別会社にする「法的分離」にとどまらず、発電・小売会社との資本関係も解消させる「所有権分離」を実行すべきだという声も高まっている

実際に海外では、イギリスやドイツなど所有権分離を実現している国がある。
ENECHANGEの千島氏も、所有権分離を視野に入れるべきだとする立場だ。

(ENECHANGE 千島亨太執行役員)
「考え方は3つあると思っています。1つ目は自主的に改善してもらうこと。これは今まさに、関電さんが自主的に取り組みをされているような改善策で解決する方法。2つ目は、今の(発送電の)法的分離という枠組みの中で、監査監視機能と罰則規定を強化することによって、自浄作用を図ること。最も厳しい3つ目が(発送電の)所有権分離。それによる完全な分離独立を図り、徹底的に監視管理対象にするという、この3つだと思うんですよね。残念ながら、1つ目と2つ目が、上手くいっていなかった、または上手くいかなさそうであるのが明確になってしまった」
電力業界が過度に“性善説”に立って、不正がまかり通る状況を放置していたことを看過せずに、所有権分離も含めてどんなシステムが最適なのかを議論するタイミングだと思っているんですよね

関西電力と関西電力送配電に出された業務改善命令は、電気事業法に基づく行政処分としては、最上級の厳しい処分だ。経産省は関電・関電送配電の両社に、抜本的な再発防止策を練って進捗を報告することのほか、関係者への厳正な処分を命じている。

関西電力が業務改善命令を受けたのは、金品受領問題に関連して出された2020年3月以来。3年間で2度も業務改善命令を受ける異常事態で、信頼は完全に地に堕ちた。

関西電力は経営理念の中で、自社の存在意義として、『「あたりまえ」を守り、創る』を掲げている。関電が、電力の安定供給という「あたりまえ」を担ってきたのは事実だが、不正閲覧問題にせよ、カルテル問題にせよ、公正に他社と競争するという「あたりまえ」は、悲しいほどに軽視していた。“不祥事のデパート”というイメージを払拭するのは容易ではなく、いばらの道が待っているだろう。

(MBS 電力担当 松本陸)