「嫌いだから叩くわけじゃない」“しつけ”という名の“虐待”へ

春子さん(仮名・40代):
この当時は4歳とか5歳とかですけど…

ーー(虐待が)一番激しかったころ?
そうですね、はい。
言ってもすぐやらないっていうところが、自分の中で一番ネック。そういう時にお尻を叩いたり、顔、ほっぺを殴ったり。ほんまに強かったら赤くなるくらい。手形がつくまでやっちゃう。
ズボンをはいて『これも出来へんのか、なんで出来へんねん』とか。着るのもモタモタ、反対に着たりすると、『見たらわかるやろ』って感じで叩いちゃったりとか。エスカレートすると足で蹴ったりとか。

「虐待ではなく”しつけ”のつもりだった」と振り返ります。

春子さん:
この先々、外に出ても恥ずかしくないようにしてあげたい。お箸の持ち方だったりとか、そういう面はキッチリしないといけないっていう先入観の方が大きくて。
その時の旦那さんとも別れたのもあって、ひとり親だからズボラだとか、しつけができてないだとか思われたくない。本当に必死だから。何回言っても言うこと聞かなかったりするとつねってみたり。初めは『ちょっと痛いかな』くらいだけど、聞かないようになるとちょっとグリッてやったりとか。本当にひどい時はホッペを叩いていました。

エスカレートした理由は…?

春子さん:
離婚もして一人で育ててっていうのも、なかなか食べてもいけないですし。仕事のストレスだったり、何で私ばっかり不幸なんだっていうのが結構大きかったですね。
しつけという名のはけ口になってしまう。仕事も朝早くからあるんで、早く食べて早く終わりたい。そういう時は食器を投げつけるとかした。自分も親に愛されてないんじゃないかなっていうのを10代から思ってたので、本当に究極、腹立ったりすると『あんたなんか生まんかったらよかったわ』っていう感じで本当に言ってましたね。

ーー4、5歳の子はそういうこと言われるとどんな反応?
泣く。『いややー』みたいな感じで泣く。

それでも、叩くことを止められませんでした。

春子さん:
子供のためによくないのかなと思って、やめたいと思って我慢したんですけど。“叩かないとわからない時もある”っていうのが、今までの子育てで培ってきたものというか、習慣づいた虐待に走ってしまう。

ーー家族とかで止める人はいた?
今の旦那さんなんですけど、『そこまで叩くほどのことじゃないんじゃないか』って言われると、次にする時は見てないところでやろうとか、どうしてもやめられない。

叩くことによって強さも増してくるので、うるさく言いながら走り回るっていうのがあると…つい大声で言って、止めて、叩いてしまって。ちょっとよろけて机の角にぶつけたりとか、血がびゅーって出たりとか、うわーってなるけど『ごめんね』って言えない。

ーー地域の人に相談するのは難しい?
虐待してんでって思われたくない。噂って結構広まるんで、地域の人には言えなかったですね。

虐待を止めたきっかけは?

春子さん:
(子どもの)健診の時に、保健師さんが親身になって『ちょっとお話しようか』とか。口調も柔らかくて色々言えるようになったというか。色々な(親の回復支援)プログラムがあると聞いて、そういうのを実践してみると、子どもの反応も変わってきて。

今は本当に叩くことも無く、(子どもが)怒ってたり泣いてたりすねたりしてても、『ホンマはどういう風に思ってる?』っていうのを素直に聞けるようになったのが一番大きいですかね。

今までだと『ママ好きやで』って言ったら(虐待を)止めてくれるんじゃないかみたいな感じの、媚びてるような「好き」が多かったんですけど、それが“本当に思ってくれてるんやな”っていう、笑顔で言ってくれることが増えてきた。

知って欲しいことがあるといいます。

春子さん:
(子どもが)好きやけど、どういう風に言ってあげたら喜ぶのか。本当に表現も下手で、そういうこともできなかった。全員が全員、子どもが嫌いだから叩く、必要じゃないから叩くっていうわけでもないっていうのは世間の人には知ってもらいたい。