産まれた直後から里親に育てられ、その後、実の母親と暮らすも、憧れていたのとはかけ離れた生活…。それでも今、自分の経験をもとに里親制度の講演活動に笑顔で取り組んでいる人がいます。
(HBC北海道放送 宮下彩)
前編・後編のうち後編)

大切な金を無心する実母、救ってくれたのは…

実母との関係を絶つため北海道を離れ、名古屋市の看護師を目指す専門学校に進学した米田幸代さん。しかし実母から、電話で金の無心をされます。

「最初は、2万円、3万円。母は返すと言うものの返してくれたことは1度もなく、途中からはあげるつもりでお金を渡していた」

専門学校時代の米田さん

ある日、実母から「まとまったお金がほしい」と連絡が来ます。

「学費のために貯めていた30万円を貸してと言われ、絶対に返してねと言って渡しましたが、母は返してはくれませんでした」

昼も夜も必死でアルバイトするも、学費の残り10万円が足りません。学費を払えなければ進級が厳しくなります。

頼る人がいなくなった米田さんは、意を決して里親に電話をします。

米田さん「絶対に返すので、学費のための10万円を貸してください」
里親「幸代、返さなくていい。自分のために使いなさい」

里親はそう言って、すぐに10万円を工面してくれました。

里親のお母さんと米田さん

「里親さんのところを離れたのは、自分が親を選んで離れたっていう負い目を感じていたのと、里親さんに迷惑をかけたくないのがあった。でも、10万円を工面してくれたときに、私は里親さんに愛されていたんだと改めて感じた」

この電話をきっかけに、里親と頻繁に連絡をとるよう心掛けたといいます。
「里親さんもそんなに若くはないし、今からでも改めて感謝を伝えたい」、そんな思いからでした。

里親の葬儀で再会した、運命の人

その後、名古屋で看護師になり、20年働きました。
「ずっと母にダメ出しをされてきたけど、人の役に立てているんだと自分自身が患者さんたちに癒されていきました。看護師の仕事を通して私が癒されて、優しさも感じることができてよかったです」

里親のお父さんと米田さん

37歳のとき、里親のお父さんが亡くなりました。
その葬儀で、里親の実の孫である容平(ようへい)さんと30年ぶりに再会。

里親のお父さんが結び付けてくれたのでしょうか。米田さんと容平さんは、夫婦になりました。

夫の容平さんと米田さん