街中で突然、大きな声で"乱暴な言葉"を発する人を見たことがある人もいるのではないでしょうか?
例えば「死ねよ!」とか「うるせえ!」だとか…。
私は電車の中でも窓を繰り返し叩く人を見かけたことがあります。まわりの人は席を立って離れていきました。
私も「変な人だな…。近づくのはやめておこう」
そんなことを思いながら距離を取っていました。
しかし彼らが“病と闘っている人たちだったのかもしれない”とわかったのは去年2月のある男性との出会いがきっかけです。
私が男性を取材するようになるまで。そして、男性と同じ病に悩む人たちを映画館に招待し、上映会を開くまでの取材記です。
深夜に届いた配達員からのメッセージ
私が仕事終わりの深夜、自宅で頼んだウーバーイーツ。見たことのない長文のメッセージがスマホアプリに表示されました。

(アプリに表示されたメッセージ)
「ご注文ありがとうございます。この配達はわたくしREONが運ばせていただきます。チックという病気があり、身体の動きや声が出てしまうことがありますが、許していただけると幸いです」
レオンを名乗る配達員から届いた突然のメッセージ。どんな人が来るのだろうか…?
“許していただけると幸いです”
「客」と「配達員」という短い時間の関わりの中で、そんなお願いを事前にする必要があるのだろうか…?色々と想像を膨らませているうちにマンションのインターホンが鳴りました。
「ピンポーン」
インターホンのモニターに映る“レオン”さんは当時25歳の私と同じくらいの年齢でした。
「あ、あ、あいよ!」「あいよ!」「うるせえよ!」
配達員が近づいてくるのは、部屋にいてもすぐにわかりました。予想だにしなかった大きな声で、少しだけ怖さも感じました。
レオンを名乗る配達員の正体は棈松怜音(あべまつ・れおん)さん(28)。

自分の意思に反して大声が出たり身体の動きが出てしまう“チック”の症状が重いトゥレット症という病と闘っていたのです。
恥ずかしながら私は配達員の怜音さんと出会うまで、トゥレット症について知りませんでした。
もしかしたら自分と同じように病気だと知らずに誤解してしまっている人が世の中には多くいるのではないか…?
怜音さんへの取材を試みることにしました。