「私はここで死ぬ」イタリア人男性 “最後の言葉”

仮放免となったイタリア人のルカさん。多摩川の河川敷でのホームレス生活を支えていた人物がいた。

東京・昭島市でホームレス支援を行う、マーセル・ジョンテ牧師。

ルカさんが最初に来たのは2021年11月。毎週欠かさずマーセル牧師のもとを訪れていた。

マーセル牧師はルカさんにシャワーや食事を提供し、交流を深めていったという。

マーセル牧師
「ルカさんは、人を助けることが好きで、プロジェクターのスクリーンなどを直してくれた。すごい天才、本当に。役に立つことが好きだった」

よく冗談を言って周囲を笑わせ、施設に来るときは明るい表情を見せていたが、精神的に不安定な一面もあったという。

マーセル牧師
「たまに、すごく良くない状態。鬱っぽいような (Q.なぜ鬱っぽくなっていた?)やっぱり、彼のビザの状況。橋の下に住んでいたことが、すごく嫌だった。一番言っていたことは『元の人生に戻りたい』と」

そんな生活が一年ほど続いた、去年秋のある日のこと…

近所に勤める人
「入管の人だと思うんだけど、5~6人くらい来たかな。連れてかれちゃって。荷物も一緒に持って行った」

関係者によると、ルカさんが住処にしていた橋の工事が進み、ルカさんの存在が、入管に報告されたのではないかという。そうしてルカさんは、去年10月25日、東京入管に収容された。マーセル牧師は面会に行った。すると、今も忘れられない言葉を口にしたという。

マーセル牧師
「彼は、『私はここで死ぬ』と言った。(Q.なぜそんなことを言ったと?) 絶望。希望がなかった。私は彼に『諦めるな』と言った。『もうちょっと』と…」

それが、ルカさんと交わした最後の言葉だった。2週間後の去年11月18日の朝、ルカさんは、収容施設で自ら命を絶った。

マーセル牧師
「すごくショック。信じられなかった。まさか、まさか…。今もショックが残っています」

入管によると、収容時、本人から精神科受診の申し出はなく、必要性もみられなかったため精神科の診療はしていなかったという。

5年前に彼を診察した医師は…

医師
「入管のドクターが『どこまで医療の介入が必要か』をもっと細かく詳しく見て頂いていれば良かったんじゃないか。あるいは精神科なり心療内科なりの専門家がそこに入って、リエゾンって言うんですけど、色んな科と連携して診ていく…。この方のことを考えると涙が出てくる。孤独だとか、絶望だとか…」