“ブラック部活”をなくすために
ーー“ブラック部活”予防のために、部活顧問はどう変わるべきでしょうか?
顧問たちには、もっと広い視野を持ってほしいです。例えばスパルタ的な指導は、選手の芽を摘んでしまいます。部員がつらい思いをして、何とか3年間やり抜いたとしても、次のステージでは「もう苦しい思いをしたくない」と競技をやめるケースが非常に多いのです。
一方、海外の指導者は、例えば中学生なら「中学時代はこれからの長いスポーツ生活の中で通過点に過ぎないのだから元気に送り出してやろう」という気持ちで育てるので、決して無理をさせないように、その世代に応じたやり方でのびのびと競技に打ち込むことのできる環境を整えるんですね。
しかし日本の指導者は、どうしても3年間で結果を出してやらなければならないと考えてしまう。どうしてもこの大会で勝利を味あわせてやらなければならないと、目の前の成績ばかりにとらわれてしまうので、無理な指導になってしまう面があると思います。

オープンにすべき部活動の空間
ーー学校の校長や教頭は「ブラック部活」にならないよう、どう管理すべきでしょうか?
部活動を閉鎖空間にしないよう常にオープンにして、例えば保護者も地域の人も見に来ていいとか、他の学校の指導者や部員たちも自由に見学していいとか、オープンな環境にすべきだと思います。
逆に、指導者もどんどん他の学校に行って、他の指導者の指導の仕方を見学するような機会を増やすといいと思います。オープンにすることで指導者同士の学び合いも生まれます。他校の人々や地域の人たちとの交流もできるようになると思います。
たくさんの目にさらされると、“襟を正さなければ”と自覚せざるを得なくなります。これからの部活動は、地域に開く、どんどん開かれた場になっていく必要があります。その第一歩として、例えば校長や教頭など管理職が部活動をしょっちゅう見に行く。それから他の学校の校長先生や先生が見学する。そうした機会をたくさん設ける工夫もあったらいいと思います。
ーー「ブラック部活」解消のために国に求めたいことは?
もう少しスポーツ教育の分野にもお金をかけるべきです。人材も集まります。いい指導者が残ります。そうなると、悪い指導者は淘汰されていきます。
どうしても学校の先生が手弁当で、家庭を犠牲にしてまで無理して指導している構造では、指導のあり方が、ここまでやってるんだからということで、非常に独裁的な体制が作られやすいのですね。ボランティアでお願いしているのだから、多少おかしな指導をしていても、管理職も文句が言えなくなる。
だから、きちんとした報酬を与える。その代わりに、きちんとした科学的な指導をやりなさい、という形で強く言えるようにするのが大事じゃないかと思います。
(2023年1月14日放送『報道特集』「ブラック部活はなぜ続く?」より)
執筆者:TBSテレビ「news23」編集長 川上敬二郎