勝利至上主義・世代間連鎖・保護者の期待… ブラック部活の背景
ーーなくならない「ブラック部活」。不適切指導を続けてしまう背景には何があるのでしょうか?
まず挙げたいのは勝利至上主義が根強く残る学校の存在です。部活動で強い学校はそれなりに名前も売れたり、受験者の獲得にも繋がったりします。部活動が強いと、地域でも“健全な学校”というイメージがつきます。

他には、顧問が生徒だった際に受けたパワハラ指導を繰り返してしまう「世代間連鎖」があります。顧問が“体罰は効果がすぐに出る”と思い込んでしまっている問題もあります。顧問が部活動を好きなあまりに子どもたちに熱さを押し売りしてしまうという問題もあります。
いわゆるモンスターペアレンツなど、保護者の過剰な期待も大きいですね。例えば「うちの子は勉強が全然できないけど、スポーツなら得意だから何とか部活で結果を残させ、進学や就職等に有利になってほしい」と願い、顧問にプレッシャーをかけるというようなケースです。

見直すべき中高生の全国大会
ーー大人たちが部活動に過剰に期待してしまう。ここには構造的な問題もあるのでしょうか?
全国大会とか夢の舞台が用意されているというのはすごく大きいと思います。大きな大会で成績を残すことが生徒・学校・保護者のためにもなるという考えから、どんどん推し進められていくことがあると思います。

その意味で、あえて私の個人的な意見として踏み込んだことを言いますと、中高生の全国大会はなくしていく方向が望ましいと思います。都道府県の大会までの規模で行い、「負ければ終わり」のトーナメント方式ではなくリーグ戦方式で、無理のない日程を組むようにするのがいいと思います。
トーナメント方式だとどうしても勝ち進まなければならないため、エース選手に無理をさせてしまい、結果として故障して選手としての途を絶たれるというケースはこれまでにいくつも耳にしてきました。また、大事な局面でミスをした選手を指導者が精神的に追い込み、部に居づらくさせたり、トラウマや死にまで追い込むような事例も出ています。
リーグ方式であれば、対戦校のレベルに応じて出場選手を入れ替えるなど、できるだけ全員に出場機会が与えられるようなチーム作りもできるのではないでしょうか。
都道府県の人口規模が大きい場合にはブロック分けをして、無理のない試合日程で行うことも必要でしょう。