『後ろ向きな自分が嫌だから』…記憶障害と向き合いながら前向きに生きる

 順子さんが今一番好きな時間は陶芸です。器用な手先を活かし、丁寧にゆっくりと仕上げていきます。たくさんの作品が完成しました。

 (鈴木順子さん)
 「自分のやりたいことをやっている感覚。没頭できるっていうのかな」

 自宅のガレージを改装し、近所の人たちも集まって陶芸を続けています。
 事故の衝撃で「高次脳機能障害」という記憶障害と向き合いながら、現実を受け入れてきました。

 (鈴木順子さん)
 「認めたくないんですよね。自分が事故にあったという事実を認めたくないんです。受け入れないとしかたないですね」
 母親のもも子さんは、少しずつ回復していく順子さんをうれしく思う一方で、複雑な気持ちを抱くようになったといいます。
 (母・もも子さん)
 「これからも(回復して)伸びていく可能性があるから。そんなことを今考えると、遺族の人の気持ちは(事故時点で)ストップしている。それよりも(悲しみが)もっと深くなっていると思うと、助かったことが反対に申し訳ないというのがずっとあったんですけど、生きていてよかったのかなという。そういう思いがこのごろ強くなりましたね」
 順子さんは、負傷者の1人として、しっかりと生き続ける覚悟をしています。

 (鈴木順子さん)
 「(Q順子さんは前向きですね)私が前向きなのは、後ろ向きな自分が嫌だからです。そういう気持ちになる弱い自分がすごく嫌なので、無理やり前向きに」