打ち上げ直前、自室で録音機に一人語り
ロケットで宇宙へ行くことに恐怖心はなかったかと尋ねられることがよくありますが、秋山さんとそれについて話した記憶がありません。星の街にいると、飛行機よりもソユーズロケットの方が安全だと感じます。実際今に至るまでソユーズロケットの打上げで死亡事故が起きたことは一度もありません。ただ、地球への帰還時に死亡事故があったことを授業で知り、その時は不安がよぎりました。
秋山さんは、打上げの3週間ほど前に発射場のあるバイコヌールに移ってからだんだん恐怖やストレスを感じるようになっていったようです。
1週間ほど前になるとTBSラジオ局の報道部員が持ってきていた録音機を自室に持ち込み、その時考えていることを口頭で吹き込んでいたそうです。「遺言のようにも感じた」とその編集部員は言います。
録音の中に、「今日は散歩中に犬の死体が2つ道路端にあるのを見た。なんであんな所にあったのだろう」と、何かの暗示のように感じる言葉もあったそうです。弱みを見せることを嫌う秋山さんが珍しく吐露した、恐怖を映す心象風景のように感じたそうです。
打上げ前日には、番組の説明をするテレビスタッフに秋山さんが怒りを爆発させる場面もありました。責任感からくるストレスなど、いろいろなものを抱えていたのではないでしょうか。
TBSのスタッフや研究者の先生方は、打上げの3か月ほど前から時々星の街に来て宇宙特番や実験の説明を行っていました。宇宙での仕事は分刻みで計画されていました。テレビとラジオの様々な番組への出演はもちろんですが、地表の撮影もいつどこを撮影するか細かく決められています。ミールステーションは、地上からほんの400kmほど上空を、地球の自転によってズレを生じながら飛行していて、日本など撮影したい場所の上をいつも飛んでいるわけではないからです。
撮影した映像を地上にダウンリンクするのも、地上局とつながる時間でないとできません。これも分刻みです。二ホンアマガエル6匹の世話や観察、医学実験として自分の呼吸や脳波、心電図などを記録することも課されています。スポンサー企業の商品のCM用撮影も…。すべて予定通りにいったわけではありませんが、いろいろな機器を慣れない無重量空間で、しかもひどい宇宙酔いに苦しみながら扱わなければならなかった秋山さんの苦労は、地上からは計り知れなかったと思います。














