「天ぷらうどんを頼んだら、うどんの上に魚のすり身を揚げた茶色い食べ物が乗ってきて驚いた」——九州に出張した東日本の人が体験する、この食文化のギャップ。一般的に「さつま揚げ」と呼ばれる食べ物が、地域によって「天ぷら」「かまぼこ」「はんぺん」など、まったく異なる名前で呼ばれる現象の背景には、日本の食文化史と方言の興味深い関係が見えてくる。

北陸の方言について研究している金沢大学の加藤和夫名誉教授が解説する。

「さつま揚げ」をめぐる呼称の東西対立分布

2017年にJタウンネットが実施した調査によると、魚のすり身を油で揚げた食品の呼び名は、全国的に「天ぷら」(44.5%)と「さつま揚げ」(34.4%)の二大勢力に分かれる。興味深いことに、その分布は明確な地域差を示している。

「さつま揚げ」という呼び名は中部地方を含む東日本に広く分布する一方、「天ぷら」は西日本と青森、北海道に分布し、青森、北海道を別にすると、その分布は北陸の石川と長野・静岡を境とする東西対立分布を示す。金沢大学の加藤和夫名誉教授は、「出身地が異なると「かまぼこ」「さつま揚げ」「天ぷら」と呼ぶ食べ物が違ってくる地域差の存在に注目する。

北海道では特異な呼称パターンが見られる。一般的に「さつま揚げ」と呼ばれる食品を「かまぼこ」と呼ぶ人がいる一方で、同じ食品を「天ぷら」と呼ぶ人も存在する。

これは、板付きの蒸した魚のすり身製品を「かまぼこ」、野菜や魚介に衣をつけて揚げた料理を「天ぷら」とする一般的な理解とは大きく異なる現象である。