■「データがない…」日本の子ども政策で繰り返される致命的な問題

龍谷大学准教授で『教育格差』著者の松岡亮二さんは、子ども政策が「その場しのぎ的」になる背景に、議論の多くがデータに基づいていないことに問題があると指摘する。
松岡亮二准教授
「結局皆さん、データがないのに議論してる部分が強いと感じています。教育政策はデータを取ろうといっても、それに基づいて議論できるのは、どうしても数年後なんですね、早くても。となると『今すぐ対策が知りたい』ということになかなか結びつきづらいです」
子どもの教育政策に関しては、効果の検証に年単位の追跡調査が必要となる。松岡准教授によると、どのような政策も完全な間違いということはあまりないという。一定の恩恵が得られているように見える子どもがいて、その後の調査は行われない傾向にあるというのだ。
一方で、同じ政策によって制限を受ける子どもがいたなど、負の側面が後々明らかになっても、確認された頃にはかなり前の話になっていて、担当者も変わってしまっているということが繰り返されているという。
松岡准教授は、時間がかかったとしてもデータに基づいた議論の必要性を強調する。
松岡准教授
「やっぱり現状把握がないと、議論にならないと思います。例えば、保育園で先生が辞めやすいという課題について、辞めるにも理由はいくつかあるはずです。どの理由がどういう特徴に結びついてるのか、どこの園のどんな先生が辞めやすいのかなど、保育園単位で毎年データを蓄積していけば、見えてくることがあるはずです。政策の議論をする上で、現状把握できる最低限のデータが必要だと思います」
少子化対策を推進するため具体策の検討を指示された小倉こども政策担当大臣は「(岸田総理から)学識経験者、子育て当事者、若者をはじめとする関係者の意見を聞きながら、3月末を目途にたたき台を作ってほしいという話がありました」と述べている。
現状ではデータが限られる中、どのような意見が集約され、議論されるのだろうか。