国の住宅施策の現状と求められる実効性のある支援
では、国はこれにどんな対策を打ち出したのでしょう。目玉は、「2025年から10年間で、公営住宅などへの子育て世帯優先入居枠を20万戸確保する」ことですが、そもそも日本では公営住宅が少なく、全住宅の3%ほどしかないうえ、近年はむしろ減少傾向です。
例えば東京都営住宅の応募倍率は平均およそ20倍です。古い団地の建て替えなどが進まない限り、20万戸の確保は難しいとみられますが、建設費が高騰する中で果たして可能なんでしょうか。もし確保できたとしても、月収十数万円以下などの厳しい所得制限を外さない限り、共働き世帯はほとんど利用できないという問題もあります。
また、既に始まっている「子育て割」制度では、例えばUR都市機構の賃貸住宅に入居する場合、新婚世帯は最長3年間、子育て世帯は同じく6年間、家賃を最大20%(2万5000円まで)減額されますが、都市部の物件は限られています。
検索して驚きましたが、入居シーズン直後とはいえ、空室は都内でゼロ。福岡市で検索しても2室でした。公営住宅には限りがある中、「空き家の活用で10万戸を確保する」施策も盛り込まれましたが、相続など複雑な問題が絡む中、これもそう簡単な話とは思えません。
財源の問題はありますが、実現可能性で言えば、むしろ家賃補助でしょう。見本となる国があります。近年、出生率が低下しているものの、2010年に2を超えるなど、長く高水準を維持したスウェーデンです。
大きく寄与した施策の一つが、補助による家賃負担の軽減制度です。若者と中所得以下の子育て世帯が対象で、子どもが多いほど支給額が増え、例えば子ども1人ならおよそ6万4000円までの家賃に対して6割強の最大4万1000円、3人以上なら同じくおよそ8万円に対して8割近い6万3000円も補助されます。
また、住宅政策は「すべての人に良質で適正価格の住宅」を原則とし、全住宅の2割以上を占める公営住宅が所得制限なしで利用できます。
うらやましい限りですが、「まぁ、スウェーデンは高福祉・高負担の国だから」と思いますよね。私もそうでした。2022年の国際比較を見ると、確かに消費税の標準税率が25%など、租税負担率は5割を超えますが、保険や年金など社会保障負担率は5%で、合計した国民負担率は55.5%です。
対して日本は、租税負担率こそ29.4%と低いんですが、社会保障負担率が19%と高くて、合計48.4%。将来の負担となる財政赤字分を含む「潜在的国民負担率」は54%程度で、スウェーデンと大差ありません。しかも、この社会保障負担の高さを招いている主な原因は少子高齢化ですから、少子化に歯止めがかからなければ、負担率はさらに上がる悪循環です。
「静かなる有事」と言われた少子化は、わずか3年前の想定を大幅に上回る速さで進み、もはや社会基盤の崩壊の音が聞こえ始めています。一方で、南海トラフや首都直下地震などの災害にも備えねばならず、侵略が相次ぐ国際情勢の中で防衛力強化の必要性も言われます。限られた財源をどう使うか、各地から届いた子どもたちの笑顔のニュース映像を見ながら、この子たちが将来も笑顔で暮らし続けられるよう、政治家任せにせず、私たち自身が優先順位を考えなければならないと思いました。
◎潟永秀一郎(がたなが・しゅういちろう)

1961年生まれ。85年に毎日新聞入社。北九州や福岡など福岡県内での記者経験が長く、生活報道部(東京)、長崎支局長などを経てサンデー毎日編集長。取材は事件や災害から、暮らし、芸能など幅広く、テレビ出演多数。毎日新聞の公式キャラクター「なるほドリ」の命名者。














