■マリウポリ重大局面“投降期限”切れ 製鉄所に市民数百人
一方、ロシア軍に包囲され、街の9割が破壊された南東部・マリウポリでは、荒涼とした風景が広がっています。取り残されている市民は10万人以上いるとみられ、深刻な危機に陥っています。
マリウポリの住民
「水の供給をなんとかして。水なしでどうやって生きていくの。ひどいわ」
これまでウクライナ軍は港湾地区と製鉄所エリアで抵抗を続けていましたが、ロシア軍は港湾地区を制圧したと発表。残るは製鉄所エリアだけとなりました。日本時間夕方、親ロシア派の報道官は突撃作戦を開始したと発表。ロシア国防省も日本時間午後8時から10時の間に、敵対行動をやめて降伏するよう呼びかけました。
ロシア国防省
「武器を捨てたものは命を保証する」

これまでロシア側の激しい攻撃を耐えてきた製鉄所の拠点。施設内には広大な地下シェルターがあります。
きょう、ウクライナ軍側のアゾフ連隊が地下の様子とされる映像を公開しました。
男の子
「攻撃があったときに神経質にならないように我慢しています。地下にいても揺れます」
薄暗い地下には多くの子どもたちの姿がありました。
男の子
「おもちゃで遊んだり、スマホでゲームをしています。見て、こんな工作をしたよ」
食料の容器で作った手作りのおもちゃ。赤ちゃんを抱いた母親の姿も映っています。
母親
「両親と私の息子といます。ここに来たときは息子は生後3か月でした」
電気はついていますが、地下に多くの市民が身を寄せ合って暮らしていました。壁際には洗濯物とみられる衣服が掛けられています。
「アゾフ連隊」の指揮官
「今、製鉄所には数百人の市民が避難している。子どもたち・女性・高齢者、マリウポリを守る人々の家族もいる」
製鉄所はロシア軍に包囲されていて、地下に避難している人たちは食料も不足していると訴えます。1か月以上、地下にいるという女の子は・・・。
製鉄所に避難している女の子
「最初は全てが食べ物も十分ありました。1年間の備蓄があると言われていましたが、実際は1か月分だけでした」
製鉄所に避難している女性
「息子はずっと泣いています。上の息子はうつ状態に・・・。平和なウクライナを懐かしがっています」
ーー家に帰りたい?
製鉄所に避難している子どもたち
「すごく帰りたい」
赤ちゃんを抱いた女性はこう訴えかけました。
製鉄所に避難している母親
「動画を見た皆さん、ここから避難できるように人道回路を設ける支援をしてください。この戦争を起こした人達に同じ苦しみを味わってほしいと強く願います」
一方、ロシア側はこの動画について“偽の情報”と主張しています。
新ロシア派の報道官
「アゾフ連隊が沢山の民間人を製鉄所に閉じ込めていた。でもそれは2か月前の話だ。今は民間人はいないと聞いている」

製鉄所は複雑な地下構造を持ち、頑丈につくられているといいます。ロシア側はこんな分析をしていました。
親ロシア派
「製鉄所はパイプライン・通路・地下施設があり、もう1つのマリウポリといえるくらい広い。空爆や封鎖・核兵器による攻撃も考慮され、ソ連時代に建設された頑丈な施設だ」
製鉄所をめぐる攻防は今後、どうなるのでしょうか。
軍事ジャーナリスト 黒井文太郎氏
「強硬策をとるなら、ロシア側も歩兵を投入しての掃討作戦。ロシア側も相当、被害が出ますので、一番オーソドックスなやり方は包囲しながら相手の衰弱を待つ」
ロシア側がウクライナ軍の弾薬や食料が尽きるのを待つとの見立てです。
一方、防衛省防衛研究所の高橋杉雄氏は早期決着を目指し、化学兵器の使用もあり得るとみています。
防衛省防衛研究所 高橋杉雄室長
「今ドンバス地方で行われている戦いに参加させるためには、早くマリウポリを陥落させて攻めてる兵力を向かわせたい。有毒の化学物質を使い、立てこもるウクライナ軍・民間人を攻撃する。化学兵器が使われることが懸念される」