■「経済制裁で先に音をあげるのは民主主義国家だ。世論の言うことを聞かなければならないから」
そもそも中東とロシアが結びつきを強めた発端は、アメリカにあった。
世界の原油価格は長くOPEC(石油輸出国機構)が主導権を握ってきた。ところが、2014年アメリカのシェールオイル輸出解禁によって、OPECの影響力が薄れる。現在も産油量の1位はアメリカだ。危惧したOPECはロシアなど他の産油国と手を組みOPECプラスを結成する。ここにアメリカ対2位以下の産油国グループという構図が出来上がった。
慶応大学 田中浩一郎教授
「本来はライバル関係にあったロシアとサウジアラビアが、アメリカのシェール産業に対抗して価格の決定権を持つために結成したOPECプラスなんです」
エネルギーを介したつながりが、中東とロシアの関係を決定づけていた。
今年3月、シリアのアサド大統領がUAEを訪問。実に12年ぶりだ。アサド政権は言わずと知れた反米親ロ。バイデン大統領の中東における求心力がなくなる中、これもアメリカからの“離反”ロシアへの“接近”と見ることもできる。
また、実は中国も石油の産出量は世界5位。それにもかかわらず、中東から8割を輸入しているということも重要な要素かもしれない。中東が“西側以外の彼ら”の味方となるとすると、今後プーチン大統領が、西側だけの経済制裁で音をあげることはなさそうだ。
笹川平和財団 小原凡司 上席研究員
「プーチン大統領は、同じように経済的ダメージを与え合っていけば、先に音をあげるのは民主主義国家だと思っている。民主主義国家は世論の言うことを聞かなければならない。だから西側が困ること、エネルギー資源の関係を利用してくると思う・・・」
今年、バイデン大統領は再び「民主主義国家対専制国家」という対立軸で民主主義サミットを開く予定だ。前回そこに招いたのは111の国と地域。その中で中東の国はイスラエルとイラクの2か国だけだ。果たしてその行動が親米の非民主主義国家のさらなる分断を招き、プーチン大統領が笑うことにならないだろうか。
(BS-TBS 『報道1930』 4月18日放送より)