■ドバイの不動産をロシア人が買い漁っている
ロシアに経済制裁を行わない中東。その一角UAE・アラブ首長国連邦には現在もモスクワなどからの直行便が行き来している。世界一の高層ビル、世界一の人工島で知られるUAEを代表する首長国・ドバイに今ロシアの富裕層が訪れ不動産を物色しているという。
ドバイ モダン・リビング不動産 ティアゴ・カルダス CEO
「ウクライナ侵攻が始まったころに不動産のキャンペーンをしたのですが、ロシア人の問い合わせが過去のキャンペーンの時に比べ10倍近くありました。75万ディルハム(約2580万円)の不動産を購入すれば、ドバイでは自動的に居住者ビザを申請できます。ビザは3年有効で不動産を持っている限り更新できます。投資金額を500万ディルハム(約1億7200万円)に増やせば有効期間は5年間、これも更新可能です」
実際購入するロシア人も大勢いてカルダス氏の不動産会社では、ウクライナ侵攻後にロシア語のできるスタッフを3人雇わなければ仕事が回らなくなっているという。今、何故ドバイなのか、ロシア政治に精通する湯浅剛氏に聞いた。
上智大学 湯浅剛教授
「今、西側の国は陸路も空路も封鎖されロシアは孤立した状態です。その中でドバイ、イスタンブールっていうのはロシア人が外に出ていく重要な中継地になっている。ビジネスにおいても制裁下で拠点を築く場所としてドバイは選ばれている」
親米のはずのUAEが制裁逃れの拠点になっているようにも見えるが・・・
慶応大学 田中浩一郎教授
「制裁対象はオリガルヒなど富豪たちで、一般のいわゆる“小金持ち”は制裁対象ではない。つまり金融資産を動かすことはできる。となればどこかに投資するということはある。将来のための資産投資先としてはドバイ、イスタンブールは考えられる。根源にあるのは、現在の制裁は中途半端なものだということです。最強の制裁を科したと宣伝はしていますが、実際はそれほどの効力を挙げるところまではいっていない。現在の制裁は“一次制裁”で『うちの国の人間や企業はロシアと取引をしません』という段階で止めている。問題は、他の国が同調しない場合にそれを止めることはできない。“二次制裁”というよりいやらしい制裁をかければ、否応なしにロシアと付き合っていく国はアメリカの金融市場からも排除されるということになり、つまり踏み絵を踏まされることになる。するとアメリカで商売ができなくなるとか、ドル決済ができないとか、それはさすがに困るので、制裁に同調するようになる・・・」
現在行われている“一次制裁”とは、自国とロシアとの間だけで取引を止めること。
これに対し“二次制裁”とは、ロシアと取り引きをする国、企業、人すべてを制裁対象とするという厳しいものだ。当然自分たちも取引相手が大幅に狭まり苦しくなる。いわゆる“返り血”も激しい。中東然り、現在もロシアと取引をするインドや中国、アセアンが結束した場合、どちらが血を多く流すことになるのだろうか。