アメリカを中心とした西側の対ロシア経済制裁が効かない。日本の円安に歯止めがかからない一方、ルーブルは戦前に近づいているほどだ。 “ロシアは孤立している”“プーチンは自分だけの世界にいる”これが日本も含めた西側諸国の見方だが、本当にそうなのだろうか。

番組が注目したのは、ロシアと中東の関係。かつてアメリカ側だった親米の中東の国たちが、いまや大きな抜け道になっていたのだ。ウクライナ侵攻で浮き彫りになった西側諸国とそれ以外。孤立するのはどちらなのだろうか。

■「サウジアラビアのアメリカ離れはバイデン大統領がまいた種」

冷戦時代、当時のソ連がアフガニスタンに侵攻した。1979年から10年にわたる戦争となりアメリカを筆頭に世界の多くがソ連を非難した。その象徴となったのがモスクワ五輪のボイコットだ。アメリカ大統領の呼びかけに応じ中国も含め、実に60か国が五輪に参加しなかった。その中にはイラン、サウジアラビア、エジプト、UAE、カタール、バーレーンなど中東の国も多く含まれていた。
ところが、今回のウクライナ侵攻に際し、西側諸国が呼びかけたロシアへの経済制裁を行っている国が中東にいくつあるか見てみると・・・なんとゼロだ。
中東の中でも最も“親米”で準同盟国ともいわれて来たサウジアラビアも、ロシアへの経済制裁は行っていない。一部報道によれば、バイデン大統領がサウジアラビアのムハンマド皇太子に電話会談を申し入れたが断られているという。一体何が起きているのか・・・
中東情勢とエネルギーの安全保障を研究する田中浩一郎氏に聞いた。

慶応大学 田中浩一郎教授
「これはバイデン大統領自身がまいた種だと思う。トランプ大統領のようにムハンマド皇太子を重用せず、父親であるサルマン国王と何事も交渉しようとしていた。皇太子はそれを根に持っている」

さらに2018年にサウジ政府に批判的だった記者が殺害された事件に関して、バイデン政権が“ムハンマド皇太子が殺害を承認した”と公表したことも関係を悪化させたが、他にも理由は複数あるという。

慶応大学 田中浩一郎教授
「イランとサウジは長く対立している。トランプ政権が離脱したイラン核合意をバイデン政権はイランとともに復活させようとしている。この対応もサウジは懸念を持っている。いくつもの点でバイデン政権はサウジにとってありがたい政権ではない。さらにバイデン政権は“脱炭素”を強烈に推し進めようとしていて、それは産油国にしてみれば自分たちのメシの食い扶持を減らせと言われているのと同じだ。この辺りの対応を半ば強要してきたにもかかわらず、急に対ロシア制裁だとか、原油価格が高くなってきたから増産しろだとか言ってくる態度にも不満を持っている」

先の国連での人権理事会ロシア排除決議でもサウジアラビアは棄権している。
また、バイデン大統領の電話を拒否する一方で、ムハンマド皇太子はプーチン大統領とウクライナ侵攻後2回の電話会談をしている。実はプーチン大統領とムハンマド皇太子、かなり親しい。その親交を象徴するシーンが日本であった。2019年、大阪で開催されたG20の時。記者が殺害された事件への関与で各国代表からいわば爪弾きされていたムハンマド皇太子に、唯一人寄り添ったのが、同じくクリミア併合で各国代表から冷たい視線を向けられていたプーチン大統領だった。