宇宙エレベーター「いくらでできる?」 『Gのレコンギスタ』に込めた問題とメッセージ

八坂:私の見解を言いますと、宇宙で糸はピンと張ります。ただし糸には必ず癖がありますから、そいつが出てくる。その「ピンと張ろうとする力」とその「癖の力」がどっちが強いかで決まるんであって、基本的にはどんどん伸ばしていけば、どんどん張力というのが増えてきます。

富野:だけどその張力の問題が、さっきちらっと言った通りケーブルにも質量があるんですよ。この質量がつまり1キロ、2キロ、10キロ、20キロ‥となった時のオーダーなんです。それに耐えられるケーブルってできるんですか。

八坂:それが一番の問題で、材料の問題です。カーボンナノチューブというのが出てきて、あれだったらできるなというのが証明されてきたわけですね。

富野:いま素材の話とか、ケーブルの長さとか、宇宙エレベーターを現実にするための話を一生懸命していますが、何よりもこういう話をするための素材として『Gのレコンギスタ』を作りました。

連結式のゴンドラのアイデアというのも、それまでに宇宙エレベーターを考えている人たちは誰も考えてなかったんです。

だから、こういうことも含めてアイデアとして提供したんだから、「そろそろあなた方が物を考えてくださいよ」というのを若者たちへのメッセージとして、作ったということなんです。

山本:作品がかっこいいとか、宇宙に簡単に行けていいなとただ見ているだけじゃダメということだと分かりました。宇宙の専門家でいらっしゃる八坂先生からしてもロケットを飛ばさないで宇宙に行ける魅力というのはあるものですか?

八坂:ロケットを飛ばさないでやるというのは1つの理想形ですね。だけども、それを本当にやるためにはいろいろ問題が出てくる。実現するには一体どういう障害があるかということをちゃんと考えていかなきゃいけないんです。

私はエレベーターまで行かなくても、宇宙から紐を伸ばすっていうのは好きなんです。

人工衛星の軌道を変えたり姿勢制御に使ったりするケーブルを「テザー」と言うんですけど、これが大好きです。これは宇宙でしかできないんです。地上でやろうと思ったら絶対にできない。そういうことをやるのが宇宙に行く面白みだと。少なくとも私にとっての面白みです。

富野:そういう意味で言うと、まさに子どもの一番好奇心が強いころに、こういうことを面白いと思ってくれる子どもたちがいっぱいでてきてほしい。

先生の世代が突破できなかった現実的な問題というのもあるわけですよ。それを突破していってくれるんだろう、突破するように頑張ってほしいなというのが、アニメ屋からのメッセージです。

ガンダムファンはさっきのケーブルの問題みたいなものを理解するという回路が一切ありません。でも、これはある意味世代論で、やむを得ないことであるということも僕自身わかるようになってきました。

『Gのレコンギスタ』では、問題点をたくさん挙げていますが、それを鵜呑みにしないで「え?何がおかしいんだ?」と考えてくれる子が、次の時代を作ってくれる子だというふうに思っています。

山本:疑問を感じながら見てほしいというイメージですね。

八坂:1つこのテーマで申し上げておきたいのが、アメリカでNASAと宇宙エレベーターの実現可能性について共同研究をして、“スペースエレベーターの伝道師”と言われるブラッドリー・C・エドワーズ博士という人がいます。

彼と話をしたときに、宇宙エレベーターを作るのは日本じゃないかと言うんですね。なんで日本だ?と聞いたら、「新幹線を作っただろう」って(笑)

「新幹線の2倍か3倍の金があればできるんだよ」って彼が言うんです。私がいくら計算してもそんなコストでできるわけはないんです。

いったいいくらかかるか、いまだに決定的な数字はありません。おそらく最近では6兆円ぐらいかかるという話なんですけど、これもやっぱりまだ怪しい。それじゃ持たないと思ってます。これからの問題点の1つですね。

▼続きはこちら…【対談2】富野由悠季と八坂哲雄が語る 地球と人類の未来 「22世紀、23世紀を考えろ」「人類は宇宙に住めるのか」


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