宇宙エレベーターの作り方 10メートルの木綿糸でやってみたら…宇宙技術から考えるポイント

八坂:私もこのスペースエレベーターというのは理論的な面から検討したことがあります。どうやって作るかというのが、私にとっては非常に大きな興味です。

静止軌道の約3万6000キロまで衛星を持っていって、そこから紐を上下に伸ばす。どんどん伸ばすと最終的には地球上に達するというわけですよね。そこでアンカーを打つと。

そもそも軌道エレベーターは、「地球の重力」と「自転の遠心力」が釣り合う静止軌道に重心を保つ必要があるんです。

ところが、計算してみたら静止軌道から紐を下ろしていくとどんどん動き始めるんですよね。重力は「距離の二乗分の1」というファクターで決まってくるものですから。

重力は地球に近いほど「距離の二乗に反比例して」強くなりますし、逆に遠心力は外側に行くほど「距離に比例して」強くなる。こういう非線形の動作があるんです。

だから、静止軌道上に衛星を置いて、単純に上下に同じ長さのケーブルを伸ばしていくと、地球側の重力に引っ張られる力が勝ってしまって、全体が落下しちゃうんですよ。

スペースエレベーターの話になると、一般に「高度約3.6万キロの静止軌道からワイヤーを伸ばしていく」というふうに言いますけど、それは間違いであって、もう少し高い高度から伸ばさなきゃいけない。

遠心力が強くかかるもっと高い高度から伸ばすか、上へ伸ばすケーブルを重くするか長くする必要があるんです。

でもこれすごく面白いですよ。富野監督の宇宙エレベーターは、8万キロだから理にかなっているんです。これができたらいいなというふうに思いながら見ました。

富野:僕はそういう数理的なことは一切知識がない人間です。が、実際にモデルを考えてやってみた時に、一番初めにケーブルを伸ばすということは、静止衛星軌道から下ろすんだというところまで分かった。それで試したことがあるんです。

10メートルぐらいの木綿糸を3本張ってみて、さてきちんと張れるのかなということをやったんです。そしたら、宇宙から地球にケーブルを伸ばすのは、絶対に不可能だと分かっちゃったんです。

どういうことかというと、静止軌道にある人工衛星は「静止してる」とは言うんだけど、これは地球のある1点から見て静止しているように見えるだけで、実際は地球の自転に追従してるんです。地球という惑星の運動に対してケーブルが追従できるのか。

それからもっと問題なのは、ケーブルという質量があるものを細くしてピーンと張っていられるわけがない。静止衛星軌道3万6千キロまでの長さに対してケーブルというのがどれだけ歪むのか。

ですからこういう映像を見て、「これどうやっているんだろう、絶対におかしいぞ」ということを見抜いてほしいと作ったのがこの『Gのレコンギスタ』の宇宙エレベーターなんです。

ただ、ここの映像を作って初めて見せられた時に、僕個人的にはものすごく感動しました。どういうふうに感動したかというと、宇宙に行くものがロケットのように弧を描かないで、直線で移動しているかもしれないという快感は、これはどうしようもないくらい気持ちがいいんですよね。