『Gのレコンギスタ』宇宙エレベーターのスケール感覚「8万キロ、144の駅」
山本:テーマ1つ目に入ります。お二人ともすさまじいアイデアを現実に持ってこられた方々です。富野監督は、様々な作品にメッセージを込めて作っている。ですが、作品の世界を作っていくプロセスを知ってる人は意外と少ないのかなと思っています。そのプロセスを掘り下げながら、「アイディアを現実にする力」について考えていきます。
会場の画面には、『Gのレコンギスタ』の冒頭で登場する宇宙エレベーター(軌道エレベーター)が紹介された。
地上と宇宙をつなぐ3本のワイヤーに沿って、「クラウン」と呼ばれる乗り物が往復する。クラウンの全長は約60m。客室を備えたものや、劇中で「モビルスーツ」と呼ばれる人型兵器を運搬するものもある。

宇宙エレベーターは、地上から8万キロの高さがあり、途中には「ナット」と呼ばれる駅のような施設が144か所ある。
富野:『Gのレコンギスタ』の宇宙エレベーターは連結式になっていて、映像のものは6両編成です。途中にあるナットは、人工衛星みたいなもので、これが宇宙エレベーターの駅になっています。大体500キロに1つずつあります。
時速500キロで移動する宇宙エレベーターを使うと、地球から8万キロ先の終点まで行くのに1週間かかるんです。
1週間の間に何もないのはつまんないだろうから駅が必要。そうすると東京から名古屋、大阪ぐらいまでの距離で1駅というふうに考えていきましたので、とんでもない数がある。駅になる人工衛星は、直径1300メートルのリング状になっています。
『Gのレコンギスタ』の舞台は、資源が枯渇した地球だ。主なエネルギーは、宇宙で製造される「フォトン・バッテリー」で、資源とともに宇宙エレベーターで地球に運搬されている。この宇宙エレベーターは「キャピタル・タワー」と呼ばれ、神聖なものとされている。
富野:宇宙から資源を運搬するなら、やはり物流を成立させるシステムがなくちゃいけない、鉄道がなければいけないということで、この宇宙エレベーターレベルのものがなければいけないんじゃないのかと思いました。
今はロケットしかないからしょうがなく人間を乗せるんだけれども、危険だから本当に限られた人しか乗せられない。そういうものを乗り物とは言いません。乗り物というのは、電車みたいに毎日毎日走って、何百人もの人を平気で運べるのが乗り物なんです。

それからもっと重要なのは、もし1時間ごとにロケットを飛ばすようなことが起こったら、膨大な燃料も採掘しなければいけない。地球がたちまち人類が使えないものになってしまう。
それで『Gのレコンギスタ』という作品は、人類が一度絶滅しかけた寸前まで行って、新しい歴史を開いた時期なんだというふうにして、極めて革新的な技術が発明された後。だから宇宙エレベーターがあるんだという設定です。
映像では、雷が近くで光っていますが、宇宙エレベーターを動かす電力は、雷の電力を吸収するシステムも持たせてあることを表現したいので、ああいう絵を作っています。なんとなく使っていません。
宇宙を高速で漂流するデブリ(宇宙ごみ)が衝突しても修理ができるように、単線ではなく複々線になっています。
そこまで考えて『Gのレコンギスタ』では、宇宙エレベーターを使っています。
駅になる巨大な人工衛星は、外側にいろんな模様が描いてありますが、これはアニメだからできたんです。白じゃないと太陽光を吸収して、中がものすごく熱くなる。だから熱を避けられる塗料も含めた新たな技術があると設定しました。
そこまで考えた時に、「人工衛星にいろんな模様を描け」ということを僕が指令しました。なぜ指令したかというと、模様の描き方によって地方色がでるというふうにしたんです。ですから実を言うと144個ある人工衛星によって模様が全部違います。
アフリカ系とかヨーロッパ系とか北欧系とかいうふうにして、それぞれが住む巨大な人工衛星には、すでに地方色があるというところまで想定した物語にしています。
というような話ができるのが『Gのレコンギスタ』という作品なんですが、見た人たちはそういうことは一切思いつかないで、何一つ感動してくれませんでした。そういう経験を持っています。














