代表を目標としない佐藤独特の向上心
だが佐藤は、今後の国際大会出場については「まだ考えていません。これからじっくり考えたい」と言い、野口監督も大会当日はそのことは話し合わなかった。佐藤も国際大会での活躍を目標としたことはあった。昨年の名古屋ウィメンズマラソン後には、東京2025世界陸上の目標を次のように話していた。
「ブダペスト世界陸上(23年。20位)で世界との差を感じたので、もっと世界と戦える強い選手になりたいと思いました。前回できなかった8位入賞を目標に、先頭集団で勝負できる練習を積んで挑みたいです」
佐藤は以前から、「過去の自分を超えること」を目標としてきた。東京世界陸上も、ブダペストの20位から13位に順位が上がり、「前回よりも成長している」ことは自身でも評価できた。今回の名古屋ウィメンズマラソンでは、アジア大会代表を取ろうとは考えていなかったが、「自己新を目指して頑張りたい」と大会前の取材で強調した。野口監督が佐藤の心理状態を代弁する。
「東京世界陸上が13番で、世界とはまだ差があることをわかったと思いますが、頑張ればもっと行ける“課題感”みたいなものも感じていたんだと思います。冬のマラソンはどうする? と確認したら、名古屋で自己記録を目指して走りたいと言ってきたので、そこでまた頑張る決心をしたのでしょう。MGCやロサンゼルス五輪が進む先にあるとは理解していても、1個1個クリアして、もう少し頑張ったらそこまで行けると見えてきたら、また頑張っていくタイプです」
大きな大会を意識しなくても、佐藤は目の前の目標に向かって全力で取り組むことができる。名古屋に向けた練習では、「12月まで脚が痛く練習が上手くいかないところもあった」(野口監督)が、1月は走行距離が月間で1000kmを超えていた。「最後の方では40km走や、30km変化走で1年前を上回るタイムでも走りました。今回の名古屋の走りを見ると、本人の中ではすごい信念を持って、世界陸上後の数か月を取り組んできたんだと思います」。
その結果、佐藤自身も成長を感じられる走りができた。「マラソンで勝ちたいな、という思いで走れたことは、自分にとっても良い経験です。風が強い中でも前半でしっかり力を貯めて、後半勝負ができました。自信になりましたし、これからの競技につながると思えたレースになります」。
野口監督はすでに、今年のアジア大会を目指すのか、あるいは2時間20分を切る自己記録を目指すのか、という2つの道をイメージしている。佐藤自身が決断する時も、遠くないのではないか。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

















