■子ども予算倍増に必要な5兆円「政治的な動きないと難しい」

一方で、現在の子ども予算を倍増していくためには、少なくとも5兆円規模の財源を新しく見出す必要がある

こども家庭庁の発足に向け準備する官僚からは、財源確保について、政治の力が必要だと口をそろえる。

こども家庭庁の発足に向け準備する官僚
「子ども予算倍増は、事務方がいくら頑張っても限界がある。政治的な動きがないと難しい」「内々には消費増税しかないことが分かっているけど、ここから先は完全に政治が決める話。でも今の政権にその決断ができる体力があるかどうか」

小倉大臣は財源確保について、消費増税など最初から特定の財源に的を絞って議論すべきではない、としたうえで、まずは使い道を示すことが大事だと強調した。

小倉こども政策担当大臣
「子ども予算の将来的な倍増に向けた道筋をまず明らかにしない限りは、なかなかですね、社会全体での費用負担のあり方の議論というのは決まってこないでしょうし、それが決まらない前に、『(財源は)これしかない』とかですね『これはあり得ない』とか、そういう議論になってしまうと、子ども予算の将来的な倍増に関する議論のスコープが狭まってしまうことにもなると思います。まずは使い道、中身をどうしていくかっていう議論に集中した方が、より多くの皆さんのご理解を得られるんじゃないかっていうのが私の思いです」

■『こども保険』という苦い過去

「まずは使い道を示す」小倉大臣の言葉の裏には苦い過去がある。

今から5年前の2017年、自民党の小泉進次郎議員らが提案した、子ども予算のための新しい税『こども保険』だ。

小泉進次郎衆院議員(2017年5月)
「少子化対策は待ったなしという環境の中で、こども保険という発想が出てきた」

自民党内で、社会保険料などに上乗せする形で全ての国民に負担を求める『こども保険』という案が提言されたが、子どものいない家庭や、子育てを終えた人たちの理解が得られず、結局実現しなかった。

小倉大臣周辺は、このような過去の経緯から財源論が先行することに危機感を覚える。

小倉大臣周辺
「『こども保険』の時のように国民の理解が得られないまま言葉だけ一人歩きすると、今以上に日本の子ども政策が進まなくなってしまう。特に財源の話は慎重にやらなければ」

小倉こども政策担当大臣
「現役世代が少なくなればなるほど、社会保障制度の担い手が少数の人たちに集中してしまうと。さらには消防とか警察といったですね、若い人が少なくなれば地域の担い手も少なくなってしまうということで。これは子どもがいらっしゃらない方とか、結婚をまだしていない方、さらには子育てを終えた方に対しても、少子化の影響というのはかなり大きな影響を及ぼし得るということを、国民全体で少子化の危機を認識した上で、少子化対策について国民各層のご理解を頂いて、皆で支えてもらうということが非常に重要」

■加速する?子ども予算倍増の議論

関係者は「防衛も落ち着いて、官邸も2023年のはじめには子ども予算倍増の議論を加速させる見通しだ」と話す。

2023年4月に430人体制で発足する『こども家庭庁』。

“こどもまんなか社会”の実現を目指す新組織では、予算の要求・編成の際に前提とする5つの基本姿勢がある。

1.こども政策は国の未来への投資であり、こどもへの投資の最重要の柱である。その実現のためには将来世代につけをまわさないように、安定財源を確実に確保する。
2.単年度だけでなく、複数年度で戦略的に考えていく。
3.こどもの視点に立ち施策を立案し、国民に分かりやすい目標を設定して進める。
4.こども家庭庁の初年度にふさわしく、制度や組織による縦割りの狭間に陥っていた問題に横断的に取り組む。
5.支援を求めているこどもの声を聴き、支援を求めている者にしっかりと届ける。

子どもの幸せを願う全ての人の想いを形にするため、政府には今後、子ども政策の中身だけでなく、財源も含め国民に丁寧に説明し、広く理解を求める姿勢が問われている。

TBSテレビ報道局政治部 長田ゆり