岸田政権は、5年で43兆円という大幅な防衛費の増額について、一部を“増税”で賄うことで決着させた。一方で、岸田総理が防衛と同じく政権の最重要課題と掲げる「子ども予算倍増」の道筋は、未だ“ゼロベース”だと関係者は話す。
霞が関の官僚からは「防衛の方が先にいっちゃった…」と、子ども予算の確保が後回しとなっている現状に不満の声が上がる。

政府は、2023年の4月に子ども政策の司令塔機能を担う『こども家庭庁』を発足させ、6月には「子ども予算倍増の道筋を示す」としているが、そのロードマップをどのように描こうとしているのか。小倉将信こども政策担当大臣に直接聞いてみた。

■日本の少子化「危機的」 防衛力強化しても“担い手”がいない

小倉将信こども政策担当大臣(12月20日)
「コロナの影響もあり大変深刻さを増している。危機的な状況であると認識している」

小倉大臣はまず、日本の少子化の現状についてこのように答えた。

日本の出生数はこの6年間、過去最少を更新し続け、12月20日に厚労省が発表した人口動態統計の速報では、2022年1月~10月の出生数は、前年同期比で3万3827人減少した。このままのペースでいけば、2022年に生まれる赤ちゃんの数は、統計開始以来、初めて80万人を割り込む公算が大きくなった。

子ども政策に従事してきた霞が関の官僚からは、防衛増額が先行した現状に不満の声があがる。

子ども政策に従事してきた霞が関官僚
「子ども予算倍増は、防衛と同時に歩調を合わせてやると思っていた。防衛費を増額するならその"担い手"になる人も同時に増やさなきゃ意味がない、このロジックが唯一、保守にもリベラルにも通用すると思って、こども家庭庁の予算要求のときから考えていた」

しかし、2022年の税制大綱では、子ども予算倍増の議論は後回し、2023年度から実施する、出産家庭に10万円相当を支給する事業を恒久化するために必要な、毎年1000億円程度の安定財源の確保についても「検討事項」として具体的な議論は先送りとなった。

■小倉大臣「防衛と比べて、子ども政策が後ろ向きではない」

岸田総理はこれまで繰り返し、「2023年6月の骨太の方針に子ども予算倍増の道筋を示す」と明言してきた。

小倉こども政策担当大臣
「私も政府の中で、総理や官房長官と日々議論させていただいておりますが、決して防衛やGX(グリーントランスフォーメーション)と比べて、子ども政策が後ろ向きだということではなくて、総理も官房長官も政府の人たちも、非常に子ども政策の充実に関して並々ならぬ意欲を示しているということは、これは間違いないというふうに思っています。総理も来年(2023年)の骨太に『子ども予算の将来的な倍増に向けた道筋を示す』ということを、総理の言葉でおっしゃっていますので、そういった意味でも期限がしっかり決まっている中で議論をきちんと進めていく、今そういう環境にあるんじゃないかなと思います」