「新しいリベラル」の支持を取り戻せるか
リベラル派とみられる有権者には変化が生じている。橋本努、金澤悠介両氏は著書『新しいリベラル』(ちくま新書)で、7000人を対象とする大規模な社会調査に基づいてリベラルの意識変化をまとめた。
同書では、従来型のリベラルと新しいリベラルを比較し、(1)従来型のリベラルの多くは、社会的に不利な立場に置かれた人のための生活保障(弱者支援型の福祉国家)を支持するのに対して、新しいリベラルの多くは、すべての人の成長のための社会福祉政策(社会的投資型の福祉国家)を支持する(2)従来型のリベラルの多くは、高齢世代への支援を重視するのに対して、新しいリベラルの多くは、子世代・孫世代への支援を望んでいる(3)従来型のリベラルの多くは、反戦平和主義や反権威主義といった<戦後民主主義>的な価値観を抱いているのに対して、新しいリベラルの多くは、この価値観に強くコミットしていない――といった特徴を指摘している。
今回の総選挙では、ここでいう「新しいリベラル」の多くが、これまでの立憲民主党から、中道ではなく自民党やチームみらいに流れた可能性がある。ただ、高市政権が物価高対策などで成果を出せなければ、新しいリベラル層は中道支持に回帰することもあり得る。その点でも中道が理念・政策と組織作りで政権の受け皿となれるかどうかが問われる。
インフレが続いても実質賃金が増えない。株の売却益や配当で潤う富裕層と非正規で働く低所得者層との格差は広がる。増え続ける国家債務への不安が募る。国際社会では、ロシアによるウクライナ侵攻が続き、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」外交が法の支配や自由貿易体制を揺るがしている。
社会保障を充実させ、格差を縮小し、法の支配と自由貿易体制を回復させる。そんなリベラル政治の役割が今ほど求められている時はない。リベラルを掲げる政治家がひるんでいる暇はない。
〈執筆者略歴〉
星 浩(ほし・ひろし)
1955年、福島県生まれ。
79年に朝日新聞入社、85年から政治部。総理官邸、自民党、外務省などを担当。ワシントン特派員、特別編集委員などを歴任。
2004-06年、東京大学大学院特任教授。
16年に退社し、TBSへ。「NEWS23」キャスターやコメンテーターを務める。
著書に『自民党幹事長』(筑摩書房)、『官房長官 側近の政治学』『永田町政治の興亡』(いずれも朝日選書)など。
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。














