リベラル派の旗手も“リベラル批判”に屈し敗北

鈴木氏の言うように、リベラル派の旗手である米国の民主党も「高尚な論議に安住し」、敗北した経験を持つ。2016年と24年の大統領選だ。

16年は民主党のヒラリー・クリントン氏と共和党のドナルド・トランプ氏との対決だった。ビル・クリントン大統領の夫人、バラク・オバマ政権の国務長官、上院議員という経歴を持つクリントン氏は、抜群の知名度から選挙戦を優位に展開。医療制度の拡充などリベラルな政策を掲げていた。トランプ氏はクリントン氏への個人攻撃を含めリベラル批判を続けた。

結果は、クリントン氏が東海岸や西海岸のリベラル派の強い地域を制したのに対して、トランプ氏が中西部や五大湖周辺のラストベルト(錆びついた地帯)の各州で勝利を重ねて接戦を制した。グローバル化の波の中で失業や賃金減少に苦しむ白人労働者が民主党を離れて共和党に流れた結果だった。

20年の大統領選では民主党のジョー・バイデン氏がトランプ氏を抑えて勝利。上院議員や副大統領として労組との良好な関係を維持してきたバイデン氏に労働者の支持が戻った結果だった。

24年の大統領選ではバイデン氏が高齢を理由に再選出馬を見送り、副大統領だったカマラ・ハリス氏が立候補、トランプ氏との対決となった。結果は、トランプ氏が接戦州のほとんどを制して大勝。同時に行われた連邦議会の上下両院の選挙でも共和党が勝ち、過半数を獲得した。

クリントン氏もハリス氏も弁護士資格を持つ超エリートで、政策の議論に精通している。移民問題やLGBT問題などではリベラルな立場で、トランプ氏とは対極にある。だが、鈴木氏が指摘するように「没落する中流階級の悲鳴に耳を傾けて来なかった」面は否定できない。「上から目線のリベラル」に対して一部の労働者が離反した結果ともいえる。

トランプ大統領は25年1月からの第2期政権で、不法移民の強制送還や世界各国への関税強化、政府機関での多様性を重んじる措置の禁止など反リベラルの政策を次々と打ち出した。民主党は上下両院で抵抗してきたが、トランプ氏に押し切られるケースが続き、「冬の時代」といわれた。

それでも、民主党側には復活の兆しが見えている。25年11月に投開票されたニューヨーク市長選で、民主党新顔でイスラム教徒のゾーラン・マムダニ氏が当選して注目された。マムダニ氏は34歳。「民主社会主義者」を自称し、低所得者への支援や富裕層への増税などリベラルな政策を訴えた。

同じ時期に投開票されたバージニア、ニュージャージー両州の知事選でも民主党の女性候補が勝利。3氏ともトランプ批判を前面に出して戦ったことから、民主党の反転攻勢が始まったといえる。26年11月の中間選挙で民主党が上下両院のいずれかでも多数を占めれば、トランプ大統領を追い詰めることができるだろう。