カスハラの特徴~他のハラスメントとの違い~

企業がカスハラ対応を進めるにあたっては、カスハラの特徴を理解することも重要である。

まず、他のハラスメント(セクハラやパワハラ等)との違いに着目してみると、加害者が「社外のお客様」であり、自社内には存在しない。つまり、セクハラやパワハラは社内の人間が加害者となるが、カスハラの場合は、「お客様」にあたる顧客や取引の相手方、さらには施設利用者等が加害者となる(注19)。

したがって、他のハラスメント対応では、加害者側になり得る従業員への指導・研修による未然防止、ハラスメント行為者に対する懲戒処分という直接的な措置を講じ得るが、カスハラではこれができない。

冒頭で紹介したTDRのポリシーは、カスハラのそうした特徴を踏まえて、社外の加害者に対するペナルティを示していると見ることができる。これにより、指導・研修等を強制することができない社外の行為者に対して抑止効果を及ぼし、カスハラ被害を未然に防ごうとしているのである。

カスハラは、人権侵害の問題でもある。

いわゆる「フジテレビ問題」を受けて、2025年3月31日に公表されたフジテレビ第三者委員会の「調査報告書」では、従業員(女性アナウンサー)に対する取引の相手方(男性タレント)の行為を「カスタマーハラスメントとして位置づけられる」としつつ、「重大な人権侵害」であると評価している。

第三者委員会は、そのうえで、経営陣らに「人権問題であるとの認識がなく、人権方針に基づく対応を行う発想も、人権対応の専門家に助言を仰ぐという発想もなかった」と指摘している(注21)。

この指摘を踏まえると、企業がカスハラ対応を進めるにあたっては、「ビジネスと人権」の文脈にも沿ったものにすべきである。換言すれば、個社事情に沿ってサプライチェーン上の人権リスク評価を行い、上述した「必要な措置」を講じる必要があると思われる(注22)。