企業が従業員から問われる責任~安全配慮義務違反~
そもそも、事業者(会社)は、労働者に対して、法律上、生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう配慮する義務(いわゆる「安全配慮義務」)を負っており(注14)、これに違反した場合は、労働者から損害賠償責任を追及されることになる。
これはセクハラの裁判例だが、上述した1999年の施行に伴い事業主の責務(配慮義務)が法律のレベルで明示されたことにより、「適切な措置を講じることがいっそう強く要請される」として、事業主の職場環境整備義務(安全配慮義務の一種・注15)の違反を認めた裁判例がある(注16)。
この裁判例を参考にすると、ハラスメントの仲間入りをしたカスハラに関しても、2026年10月頃の施行を迎えるにあたり、今後は会社の安全配慮義務違反が認定されやすくなることが予想される。会社としては、これを意識して適切な対応を進める必要があるだろう(注17)。
これは改正労推法が成立する前の事案だが、コールセンターで視聴者対応を行っていた従業員がNHK(会社)に対し訴訟を提起した「NHKサービスセンター事件」が実務上参考になる(注18)。
この事案では、NHKがコールセンターの従業員の安全を確保するためのルール(マニュアル)をあらかじめ定め、それに沿った対処をしていたことなどが評価され、NHKの安全配慮義務違反が否定されている。
そうすると、改正労推法対応として、上述した「必要な措置」を個別具体的に講じること(たとえば、NHKのように事前にコールセンター固有の実情に沿った個別具体的なマニュアル等を策定すること)は、結果として、会社の従業員に対する安全配慮義務違反を否定する方向に繫がるものといえる。














