代表的な企業・業界の対応

ここまで「個社事情に沿った対応を進めるべき」と繰り返し述べてきたが、以下ではその参考になる事例として、幾つか象徴的なものを紹介したい。

コンビニ大手のローソンは、店舗従業員が着用する名札について、2024年6月から「役職+任意のアルファベットまたはイニシャル」の記載を認めることにした(注23)。それまでは、実名での記載を基本としていたが、こうすることで店舗従業員個人がSNS等での誹謗中傷の対象になることを防止する狙いがあると思われる。

また、サイバーエージェントは、調剤薬局やドラッグストアに対してAIアシスタントを使った接客ロボットの導入を進めている(注24)。カスハラから従業員を守るために、客と接するスタッフをロボットやAIに置き換えようとしているのである。いずれも「個社事情に沿った対応」のよい例であるといえよう。

カスハラ対応は個社により異なる事情があるものだが、業種ごとの共通点は一定程度存在するため、同業他社と連携することや業界団体として取り組むことも効果的である。

前者(同業他社との連携)の事例としては、2024年6月に航空会社のANAとJALが共同で「カスタマーハラスメントに対する方針」を策定し公表したことが象徴的である(注25)。後者(業界団体での取組)の事例としては、公益社団法人日本薬剤師会が共通のカスハラ防止啓発ポスターを作成したことが挙げられる(注26)。